抑鬱亭日乘

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2023年8月31日(木)

N子來訪

隂。秋風颯〻たり。門前の欅半黃葉す。雜誌記事飜譯。今月分の仕事を終へたり。午後N子の武州より新幹線にて來るを地下鐵驛に出迎ふ。手土產の鎌倉五郞本店のモンブラン小波こなみを茶請に紅茶を喫しつゝ歡語す。

2023年8月30日(水)

人のために

空どんよりと曇りて暗し。

自分の幸福ばかりを考えるから、悲觀もあり、なやみもありますが、身をよそにして人のために最善をつくさうと思へば、何も悲しみもなくなる、と思ひます。

(知里幸恵「手紙 知里高吉宛 大正十一年六月九日付(東京発信)」
『銀のしずく 知里幸恵遺稿』草風館、一九八四年、七十七頁)

臥牀に橫り知里眞志保著アイヌ語入門(北海道出版企画センター刊、一九九〇年三刷)を讀む。

2023年8月29日(火)

魂の美しさ

秋晴の好き日なり。午前雜誌記事飜譯。午後臥蓐に在り、メルカリにて購入せし銀のしずく 知里幸恵 遺稿(草風館、一九八四年)を通読す。魂の美しさ感受性の豐かさに感じ入るのみ。夕餉に冷麦と昨夜の殘りものゝ天麩羅を食す。種は海老南瓜茄子隱元豆エリンギ午蒡人參搔揚帆立玉葱搔揚なり。

2023年8月28日(月)

節電

曇りて殘暑再び熾なり。NHK-FM邦樂のひとゝき小唄篇に錦次の五萬石初雪お伊勢まいり男がようて、稲舟一泉のあの日から橋わたし紺の前だれいつしかに、春日とよ恵典の廻り燈籠三つの車夕立のあまり粹なからすを聽きつゝ雜誌記事飜譯。續けて浪曲十八番に松浦四郎若の天野屋利兵衞を聽く。曲師虹友美。今月分の電氣料金請求書屆く。節電を試みむとて先月中旬より居間と書室の空氣調節器を終日除濕運轉して過せしに電氣代丁度一萬圓なり。例年に較ぶれば四割近く安くなりぬ。昨日放送のEテレ日本の話藝に林家たい平の幾代餠を聞く。この噺は古今亭志ん朝の口演に魅了されその弟子に稽古をつけてもらひしと云ふ。弟子の名は明かさゞりき。昨日の市長選擧は案に違はず余が投票せし候補者當選して尾州初の女性首長となりぬ。投票率四割に滿たず。他候補者の知的水準の低きには呆れるばかりなり。母上左手甲の火傷快癒す。日夜患部を冷し淸潔を保つこと二週間にして古き皮膚は剝がれ新しき皮膚に覆はれたり。

2023年8月27日(日)

困臥

秋晴の好き日なれど空しく家に留まる。NHK總合桂文珍の演藝圖鑑に林家あずみの三味線漫談と桂文珍のぴ~を聞く。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートに三代目三遊亭金馬の池田大助を聞く。音源は昭和三十八年八月十六日文化放送なり。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭に笑福亭仁鶴の牛ほめを聞く。音源は昭和四十八年六月十二日髙島屋ホール第五十囘上方落語をきく會なり。午後倦怠甚しく困臥夕刻に至る。

2023年8月26日(土)

晴天。TBCラヂオ魅知國寄席に三遊亭笑遊のたがやを聞く。ラヂオ關西内海英華のラヂ關寄席に笑福亭呂翔の子ほめと桂梅團治の靑菜を聞く。音源は前者が七月五日神戶新開地喜樂館晝席、後者は六月二十八日同席なり。講談社文藝文庫の現代アイヌ文學作品選靑空文庫に知里幸惠の日記を讀む。

此の世にうまれて何一つ仕出かしたいゝ事もなくて、何時私は死んでゆくかわからない。だけど、父樣よ、母樣よ、幸惠は生きてゐてなんにもおとつちやんやおつかさんにいゝ言葉をおきかせしなかつたし、ましていゝ事などは出來るはずもなかつたけれど、幸惠の心は、おとつちやんやおつかさんの慈愛に對する感謝でもつて一ぱいになつてゐたといふ事だけは眞實な事です。ゆるして下さい。それだけでゆるして下さい。

夕餉の後雷聲驟雨。東北より東南の空にかけて虹あらはる。斯くも太くあざやかにしてまた巨大なるは初めてなり。慈君と俱にヴェランダに立てこれを見る。三重テレビ淺草お茶の間寄席に春風亭一朝の芝居の喧嘩、柳亭こみちの臺所の隅、柳家さん喬の千兩みかんを聞く。

2023年8月25日(金)

東都寄席演藝家名鑑2

晴れたる空に白雲多し。東京かはら版(正式表記東京かわら版)九月號に落語協會新眞打林家まめ平かゑる改メ二代目柳家平和さん光改メ柳家福多樓木りん改メ林家希林と人間國寶五街道雲助の取材記事を讀む。東京かはら版(正式表記東京かわら版)增刊號東都寄席演藝家名鑑2を閱する。中公新書の唐沢孝一著都会の鳥の生態学を讀む。

2023年8月24日(木)

大谷翔平過勞

黎明雷雨の響に眠を破らる。雨中園丁來りて庭樹の刈込をなす。BS-TBS落語硏究會に三遊亭朝橘の本膳と柳亭市馬の宿屋の仇討を聞く。市馬が袖に下がるや畫面切替りて北朝鮮誘導彈發射の速報あり。大谷翔平右肘靱帶損傷す。三月のWBC以來働きづめなりき。休養治療を冀ふのみ。ネヴィン監督の今月大谷を說得して休ませざりしは迂闊と云ふ外なし。選手を休ませるのも監督の務めなり。

2023年8月23日(水)

札幌酷暑

蚤起。陰晴定らず。旦暮驟雨あり。早朝母上と俱にあぐりん村に徃き果物蔬菜シフォンケーキなど購ふ。家にかへりて雜誌記事飜譯。午後困臥。夕餉に札幌菊水の鹽拉麵を食す。この日札幌の氣溫觀測史上最高の三十六度三分に昇る。わが町は三十一度なり。

2023年8月22日(火)

期日前投票

曇りて殘暑甚し。慈君と俱に市役所に赴き市長選擧期日前投票をなす。候補者三名が揭げる政策いづれも幼稚窮まりなく宛ら小學校低學年の學級委員長選びなり。西班牙語雜誌記事飜譯。兩三日前より鄰の集合住宅より可憐なる小鳥の囀り頻に聞ゆ。歌ふといふよりは語るが如し。聲は大瑠璃おほるり或は磯鵯いそひよどりに似たれど姿は見えず。夕餉に初て山形鶴岡產だゞちや豆の枝豆を食す。風味頗佳し。共同通信に奇術師松旭斎すみえの訃あり。享年八十五。

2023年8月21日(月)

輕蔑

半陰半晴。床屋に徃く。理髮師との話題は大谷翔平の超人ぶりとその人品なり。散髮代二百圓値上げとなる。ガソリン價格エネオス百七十四圓、出光百八十三圓。物價の騰貴驚くの外なし。NHK-FM浪曲十八番に春野ココの舌切雀を聽く。曲師藤初雪。午後雷鳴烈しく驟雨沛然たり。夕餉をなしゐたるに市長選擧候補者の女運動員自働車にて現れ擴聲器を用いて甲高き聲を張上げ息繼ぎもせず喋々喃々早口に喚きて止まず。その言語全く聞きとること能はず。徒に騷音を市民の頭上に浴びせかけて得意滿〻たる候補者を余は輕蔑するなり。

2023年8月20日(日)

文菊の親子酒

晴れて秋暑猶熾なり。NHKラヂオ第一ラヂオ深夜便話藝百選に三遊亭圓丈の豐竹屋を聞く。音源は平成二十二年三月十五日ラヂ第一眞打競演なり。NHK總合桂文珍の演藝圖鑑に古今亭文菊の親子酒を聞く。絕品。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートに古今亭志ん生の首つたけを聞く。音源は昭和三十一年一月三十日ニッポン放送なり。ABCラヂオ日曜落語なみはや亭に六代目笑福亭松鶴の遊山船一人酒盛を聞く。音源は前者が昭和四十九年八月二十四日神戶文化ホール東西落語會、後者は昭和四十年十一月五日ABCホール第三十囘上方落語をきく會なり。夕餉に豚肉と靑梗菜の重ね蒸しを料理す。火加減强すぎ唐辛子も過多にて失敗せり。然れど調理は面白し。先週は玉菜と鷄笹身のポン酢和へ、先先週はタモリ流豚の生姜燒を料理したり。Eテレ日本の話藝に桂伸治のちりとてちんを聞く。マクラ十二分、噺は十四分にて寄席の尺なり。この噺は二つ目の頃桂文朝に敎はり、他に長屋の花見、たらちねなども敎はりたりと云ふ。中京テレビ笑點にこばやしけん太の音眞似を聞く。見事なり。

2023年8月19日(土)

打揚花火

晴れて風なし。TBCラヂオ魅知國寄席に六華亭遊花の夕立やを聞く。ラヂオ關西内海英華のラヂ關寄席に桂治門の犬の目と笑福亭生喬の須磨の浦風を聞く。音源は前者が六月二十八日神戶新開地喜樂館晝席、後者は七月十六日同席なり。秋熱甚し。七時半花火を打揚る響聞ゆ。北東の鄰市なり。慈君と俱に書齋の窓より賞す。北の空に電光閃く。三重テレビ淺草お茶の間寄席に林家ひろ木の師匠と私、活動寫眞辯士坂本頼光による漫畫映畫日の丸太郞武者修行の卷、春風亭柳好の目藥を聞く。ひろ木の根多は落語にあらず三味線漫談なり。

2023年8月18日(金)

鵯の雛

鱗雲天を蔽ふ。舊版無料 TweetDeck 本日より使用不可となる。悲しい哉。書齋にて完全版ピーナッツ全集第十四卷を讀みゐたりし時窗に何やら衝突する音聞ゆ。見るに鵯の雛ヴェランダの下に在り手摺には親鳥止まりて樣子を窺ひゐたりしが直に飛去り、雛また後を追ふが如く飛去りぬ。鵯の雛を間近に觀察するは始てなり。尾いと短し。

2023年8月17日(木)

赤蜻蛉

陰。南風濕氣を含みて蒸暑し。臥蓐に在りて書を讀む。北の空に雲の峰幾重にも重なりて立昇りたり。赤蜻蛉の飛ぶを見る。市中の早稻は穗旣にみのりぬ。

2023年8月16日(水)

新内

曇りてけふも東南の風烈し。きのふに比すれば稍蒸暑し。NHK-FM邦樂百番新内篇に鶴賀若狹掾の男作出世員唄、通稱白藤源太を聽く。三味線新内仲三郎、上調子鶴賀伊勢一郎。午後臥牀に在り。晩涼水の如し。

2023年8月15日(火)

大風と熱さまシート

大風襲來。風冷なり。岩波文庫の道籏泰三編中上健次短篇集を讀む。母上の左手を見るに中手指節關節に小林製藥の熱さまシートを貼りてあり。昨夜野菜を茹でし折誤りて熱湯を浴びたりといふ。幸にして輕傷なり。余は小林製藥の製品名の卓拔なるを稱揚せずんばあらず。トイレその後に、お部屋の消臭元、のどぬ~るスプレー、髮の毛集めてポイなど擧ぐるに遑あらず。

2023年8月14日(月)

まつ黑なおべんたう

曇りて溽蒸忍び難し。NHK-FM浪曲十八番に木村勝千代のまつ黑なおべんとうを聽く。児玉辰春作、曲師広沢美舟。講談社文藝文庫の川村湊編現代アイヌ文學作品選を讀む。

2023年8月13日(日)

桂小すみ

晴れて殘暑甚し。NHK總合桂文珍の演藝圖鑑に三遊亭萬橘の看板のピンを聞く。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートに八代目三笑亭可樂のたちきりを聞く。音源は昭和三十四年七月十七日納涼怪談特輯怪談五夜なり。Eテレ日本の話藝に五街道雲助の浮世床を聞く。六月九日收錄。中京テレビ笑點に桂小すみの音曲を聽く。隅田川さへ竿さしや屆くと信州信濃の新蕎麦よりもの都〻逸をテイク・ファイヴの調べに乘せて歌ふ。冷藏庫の唄また佳し。

2023年8月12日(土)

秋熱

晴。秋熱最甚し。TBCラヂオ魅知國寄席に桂歌春の强情灸を聞く。ラヂオ關西内海英華のラヂ關寄席に笑福亭由瓶蛇含草と桂春若の京の茶漬を聞く。音源は前者が六月十日神戶新開地喜樂館晝席、後者は八月十三日同席なり。三重テレビ淺草お茶の間寄席に林家たこ藏の權助魚、立花家橘之助の浮世節、三遊亭歌橘の宗論を聞く。

2023年8月11日(金)

すべからく

山の日とやらいふ祭日なり。快晴。秋暑燬くが如し。余が最も苦手とする季節なれど洗濯物の直に乾くは有難し。講談社ブルーバックスの戸谷友則著宇宙になぜ、生命があるのかを讀む。序章十一ページのすべからくすべての誤りなり。

生命の中で起こっている一つ一つの原子や分子の反応は、すべからく我々の知る物理法則に則っているはずであり、そこに一つ一つの粒子の意思などはない(少なくとも、科学者はそう信じている)。

2023年8月10日(木)

土を育てる

晴天。氣溫三十五度に達すれど南東の風吹き通ひて存外心地よし。NHK出版のゲイブ・ブラウン著土を育てる 自然をよみがえらせる土壤革命を讀む。

2023年8月9日(水)

小雨

陰。午後より小雨ふる。記すべき事なし。

2023年8月8日(火)

不感溫度浴

立秋。晴れて暑し。母上と俱にエンジェルス對ジャイアンツ戰テレヴィ中繼を見る。先發サンドバル好投して大谷二安打一盜壘、救援投手ソリアーノも惡しからず三對二にて迎へし九囘表ネヴィン監督またエステベスを投入して四點獻上、續けてループも二點獻上し三對八の逆轉負け、七連敗を喫す。カーラヂオのNHK-FM歌謠スクランブルに三善英史の、美川憲一のさそり座の女、内山田洋とクール・ファイブのそして、神戶、小林旭の昔の名前で出てゐますを聽きつゝことぶきの湯に赴き湯溫三十二度二分のシルク風呂に不感溫度浴をなす。正月以來なり。湯浴み客十二三人。北原山三叉路の舊道依然として廢道工事中なり。體育館南交叉點の星乃珈琲店いつか廢業して更地となりぬ。晴丘四辻西の超級市塲トップワンも取壞されて空地となれり。商舗の盛衰めまぐるしきばかりなり。

2023年8月7日(月)

beard papa

空どんよりと曇りて風あり暑氣稍退く。朝の中小雨ふりしが干天の慈雨と呼ぶには程遠く雀の淚なり。先週末驛前にシュークリーム專門店ビアードパパ開店したれば早速赴きて買ひ、慈君と俱にパイシュークリームを食す。同店の品を味ふは十一年ぶりなり。NHK-FM浪曲十八番に天中軒雲月の德川家康人質から成長の卷を聽く。谷口玉泉作、曲師廣澤美舟。午後驟雨沛然として灑ぎ來りしが五分ほどにて霽れたり。主治醫を訪ひ診察を乞ふ。睡眠劑デエビゴ錠の藥效稍乏しければエスゾピクロン錠といふ睡眠導入劑を處方せらる。またアナフラニールを半減させトリンテリックスを倍增す。

2023年8月6日(日)

干天

晴。七月十三日より今日に至るまで晴天つゞきにて一滴の雨なし。庭の土乾きて灰の如し。NHK總合桂文珍の演藝圖鑑にナイツの漫才と三遊亭遊馬の粗忽の使者を聞く。文化放送志の輔ラヂオ落語DEデートに三遊亭圓生の樟腦玉を聞く。音源は昭和四十八年七月三十日ニッポン放送なり。Eテレ日本の話藝に寶井琴櫻のおかゝ衆聲合せを聞く。六月九日收錄。

2023年8月5日(土)

椋鳥蜻蛉鷺

晴れたる空には雲多く浮びて折々曇る。母上と朝餉をなしつゝ窗外に椋鳥蜻蛉鷺の飛ぶを見る。TBCラヂオ魅知國寄席に六華亭遊花のつゞら嫁御を聞く。ラヂオ關西内海英華のラヂ關寄席に二代目桂春之輔のお玉牛を聞く。音源は七月二日神戶新開地喜樂館晝席なり。米國職業野球エンジェルス對マリナーズ戰テレヴィ中繼を見る。フィル・ネヴィン監督は何故にアーロン・ループといふ木偶を重用するにや殆解すべからず。慈君と夕餉をなしつゝNHK總合に蹴球世界盃蹴球女子世界盃日本對諾威ノルウエー戰を見る。豫選リーグ無失點の日本今大會初て一點を失ひしがミッドフィルダー藤野あおば活躍して三對一にて勝利す。

2023年8月4日(金)

蟄居

晴天。臥蓐に在りて書を讀む。終日門を出でず。

2023年8月3日(木)

フルーツケーキ

曇りて風あり。暑氣稍忍び易し。自家製フルーツケーキを食し咖啡を啜る。平凡社の白川静著金子都美絵編畫サイのものがたりを讀む。

2023年8月2日(水)

畫龍點睛

けふも好く晴れたり。先月十三日より一滴の雨もなし。門前欅の葉黃ばみて枯れつゝあり。ブレーブス対エンジェルス。1-5で負けた。相手の先発ストライダーがすばらしい。球は速いしコントロールと緩急抜群。大谷ショート内野安打。トマ・ピケティ他著差別と資本主義(明石書店)を讀む。画竜点睛をしておこう(五十三ページ)などゝいふ不可解な譯語あり。

2023年8月1日(火)

ちくさ正文館書店閉店

舊六月十五日。晴れてまた暑けれど北風吹きて存外爽かなり。雜誌記事飜譯。中日新聞にちくさ正文館書店閉店の記事を讀む。余平成十年尾州に居を定めし頃人文系の書物を求めて足繁く通ひたりき。指を屈すれば二十五年の昔とはなりぬ。