秋晴愛すべし。咖啡所コメダに朝餉を喫す。午前授業。大學構内は學園祭の前日なるを以て野外舞臺設營の最中なり。ポスターの豫定表を見るに本年はサンドウィッチマン來るといふ。再歸代名詞の用法を解說す。歸途ホームセンターに立寄る。午後執筆。創作やゝ興あり。今宵も夕餉におでんを食し日本酒一ノ藏ひめぜんを飮む。余は生來下戶なれど、この酒はアルコール度數の低きが故にや飮みやすく頭痛を催さず。二更川岸を步す。今夜もまた振興橋のたもとに警官四人ありて無燈の自轉車を取締をれり。金木犀の花未だ散らず。
朝の中晴れしが午後より曇る。書窓忽ち黯澹として午後三時に至らずして街燈早くも點ず。執筆。わづかに一枚書き得たるのみ。夕餉におでんを食し日本酒ひめぜんを飮む。夜初更日課のインターバル速步怠りなし。三重テレビ淺草お茶の間寄席に古今亭菊之丞の親子酒、林家うん平の長短、三升家小勝の源平盛衰記を聽く。川上哲治歿。享年九十三。
空雨雲に蔽はれて書窗黯澹たり。疎雨降りては又歇む。風寒し。漫畫の草藁をつくらむと茟をとりしが感興來らず。苦心慘澹たり。午後主治醫を訪ひ藥を乞ふ。この頃近鄰の小學生男児らの瓢簞形したるスケートボードで遊ぶをよく見かけるなり。舊來のスケートボードとは異なり片脚にて速力を出すにあらず、兩脚を乘せたまゝ全身をくねらせて進むなり。Jボード或はリップスティックといふブランドが主流といふ。これにつけて思出さるゝは余が小學一年生の頃の事なり。當時ローラースケート大流行し、余も世田谷區赤堤の路地にて盛に遊びたりき。兒童は今も昔も車輪付の玩具を好むものと見ゆ。夜初更溫泉。露天風呂に湯煙立上りて風情あり。三遊亭圓生のへつゝひ幽靈、二十四孝を聽く。
秋晴の空澄みて淸し。正午慈君を伴ひホームセンターに赴きセキセイ鸚哥の混合餌と鉢植用ブロックを購ふ。一時半頃家にかへるに岩谷時子の訃報に接す。行年九十七。余が岩谷氏と相識りしは平成四年、坂東玉三郎主演の芝居エリザベスの臺本を飜譯せし時なり。余は當時一介の大學院生にて譯文生硬なれば岩谷氏銀座セゾン劇場の需に應じて修辭を擔當せられたりき。平成七年再演の時再會するを得て款語したりき。溫和なる笑顏、上品なる和服、閑雅なる立居振舞今に忘れず。夜二更河畔を步す。振興橋の袂に警官四人立ち、無燈火の自轉車を運轉する男に訊問しゐたり。殘蛩の聲尙絕えず。
空漸く晴る。新寒脉〻たり。セキセイ鸚哥の爪長く伸びたれば久振りにて切る。アサリ君を仰向けにして左手に包み持つに最初は烈しく抵抗せしかど、大丈夫だよ、爪を切るだけだよと聲をかけつゞければ次第に大人しくなれり。アサリ君生來體質虛弱にて顎の力弱く、大好物のオーツ麦を食する時も薄皮を食ひ破ること能はず、嘴にてつまみし麦を水に浸しふやかして食ふを常とす。然るに爪切りの時は火事塲の馬鹿力を發揮し、親の仇とばかりに嘴の先端を余の指に銳く突刺し、その痛み宛ら錐を以て穴を穿つが如し。シヾミ君も同じく最初は抵抗すれど、嚙む力はアサリ君に及ばず。爪を切り終へて籠の中に放つに、兩君ともに橫木に止りしまゝ呆然として姑く微動だにせず。NHK總合演藝圖鑑にあさひのぼるのギター漫談、春風亭一朝の幇間腹を聽く。BS-TBS落語硏究會に古今亭志ん輔の化物使ひ、柳家小三治が茶の湯を聽く。塵芥捨場に行きしついでに暗夜の空を仰ぐに滿天星の光うつくしく宵の明星の殊にひかり輝くを見る。二更河畔を步す。一週間振なり。
雨は霽れしが强風吹きすさみて寒氣冬の如し。碧空を仰がざること旬日なり。舞踊團公式網站にFATUM! ~運命の力~の告知をなす。作業を終れば日は暮れかゝりぬ。茶請に自家製芋餠を食す。甜菜糖と醬油の味よし。桂春團治の有馬小便を聽く。本年前半NHK朝の連續テレビ小說あまちゃんといふドラマ人氣を博し、主演は能年玲奈といふ女優なり。能年とは珍しき苗字なり。日本の苗字七千傑には記載なく、全國の苗字によれば世帶數十二、また名字由来netによれば人數僅三十人の由。
朝來細雨ふりては又歇む。文化勳章に高倉健中西進、文化功勞者に中井久夫吉増剛造選ばる。受賞者みな齡八十前後のものばかりなり。高倉健は二十年前に授章せられて然るべき人なり。頭痛。倦怠。半日眠りを貪る。夜初更溫泉。BSプレミアムコントの劇場十月號を看る。ヒミツの居酒屋(吉井三奈子作)、オリンピックがやって來る(吉高寿男作)ともに平凡。心理學ノススメ(吉高寿男作)及第點。ふれあい旅館(吉井三奈子作)佳作。出演者は三宅裕司、若村麻由美、小倉久寛、北村有起哉、戸次重幸。若村の演技意外に佳し。
陰天。雨來らむとして來らず。風なく生暖かし。咖啡所コメダに朝餉を喫す。小倉トーストと茹で玉子を食し、咖啡を飮み煙草二三服つけて講義の準備をなす。午前授業。午後漫畫原案を書きはじめたれど興味索然たり。夕餉に𩸽の開きを食す。
曇天。午頃より寒雨蕭〻たり。鳧の啼く聲嬉しげなり。午後睡を貪る。雨夜に至るも歇まず。三重テレビ淺草お茶の間寄席に三遊亭笑遊が鰻の幇間を聽く。林家正樂の紙切り、客の注文によるバレリーナに惡戰苦鬪するさま抱腹絕倒なり。
雨もよひの空晴れやらず。無風。右腕を頭上に伸ばすに肩痛みて堪難し。いはゆる五十肩なるべし。茟とるも感興來らず。一枚をも書き得ずして已む。夜初更溫泉。二更堤上を步む。金木犀の芳香今なほ街を罩む。BS11ようこそ藝賓館に桂小春團治の失戀飯店を聽く。
雨後の空澄渡りて暴暖初夏のごとし。天野祐吉歿。享年八十。皮膚科に徃く。昨春癈業せし農協舊店舖にて内裝工事の最中なり。看板を見るに地域共生ステーションとやらいふ施設に生れ變はるといふ。發注者は市役所くらし文化部たつせある課と讀めり。滑稽至極なり。午後執筆。昨夜九時に錄畫せしNHKスペシャル病の起源第3集うつ病を見る。鬱病の源は扁桃體といふ腦の部位なる由。五億二千萬年前に魚類誕生し、魚は腦を持ちその中に扁桃體できたり。扁桃體は天敵の近づくを察知するやストレスホルモンを放出し、これが長きに及ぶと腦の神經萎縮し鬱狀態に陷るといふ。人類は集團生活より離れて孤獨に苦しむもの生まれ、これも鬱狀態の原因となりぬ。また恐怖の記憶も原因となり、言語が發達したる後には他人の恐怖譚を聞きて恐怖を追體驗し、これまた鬱狀態を呼び起こす。鬱の原因は天敵、孤獨、記憶、言語の四つなる由。夜初更坡上を步す。十七日頃の月の昇るを見る。土曜深夜BSプレミアムにて錄畫せし第十二囘東京JAZZにマンハッタン・トランスファーを聽く。ティム・ハウザー腰椎手術のため來日すること能はず、トリスト・カーレスといふ歌手代理出演す。ジャニス・シーゲル、シェリル・ベンティーン、アラン・ポールみな老けたり。結成四十周年。余が彼らの歌唱に夢中になりしは三十五年前、また高校合唱部の定期演奏會にて彼らの Java Jive を歌ひしは三十年前なり。
秋霖霏〻たり。NHK總合演藝圖鑑に春風亭柳好の浮世床を聽く。Eテレ日本の話藝に春風亭小柳枝の百川を聽く。昏暮雨霽る。總合テレビに平成二十五年度NHK新人演藝大賞落語部門を聽く。立川志の春ナンシーは平凡なる出來。春風亭昇吉たけのこ惡しからず。鈴々舍馬るこ平林ギャグ冱える。露の紫厩火事は男の聲音よく聞き應へあり。月亭太遊たまげほう奇を衒ひすぎなり。余は露の紫を推す。審査結果は馬ること露の紫同點、決選投票の結果馬るこ大賞を得る。
黑雲天を蔽ひて書窗黯澹たり。風雨氣を含みて冷なり。燈下執筆。曉明錄畫せしEテレ日本の話藝に桂文治のお血脈を聽く。マクラも噺も聞覺えあり。手元の落語音源を調べるに本年四月十四日に放送せられしものと同じなり。收錄は一月十八日ニッショーホールにて催されし第六四三囘東京落語會なり。夕刻五時BSフジ落語小僧にチーム江戶のリレー落語茶の湯を聽く。演じたるは桜家尋エモン、小林亭竜之介、江戸川亭ろくっこ、三遊亭白鳥なり。白鳥の古典を聞くは初てなり。たど/\しく上下も間違へて當人冷汗のかきどほしなり。
惡夢を見る。蚤起。雨もよひの空なり。原藁四篇をつくり編輯人に交附す。午後霧雨折〻ふる。初更溫泉。殘蛩の啼くを聞く。拂曉BSジャパン朝までシネマにて錄畫せし木下惠介監督のカルメン故鄕に歸るを看る。今夜天皇皇后兩陛下熊川哲也のバレエ公演を鑑賞せらるゝ豫定ありしかど、颱風二十六號が直擊せし伊豆大島にて死者行方不明者多數にのぼる事態を案じられて鑑賞は中止せられたり。また明後日は皇后陛下の誕辰なれど同じ理由にて宮中行事はすべて取りやめになりぬ。深更雨聲を聞く。
秋晴の空澄みて淸し。風漸く歇む。新寒肌に沁む。この秋始て長袖シャツを着てジャケットを羽織る。咖啡所コメダに朝餉を喫す。喫煙席フロアの壁時計何故にや撤去せらる。午前授業。動詞 hacer を用ゐて天候と時間經過の表現を練習す。一時半歸家。漫畫の草案をつくり編輯員に交附す。夜十三夜の月よし。初更香流川の堤を步す。
深夜一時頃より大風雨襲來。八時半頃臥牀より起出づるに颱風は去りて空よく晴渡りしが强風騷然たり。寒冷初冬の如し。二箇月振りにて漫畫の草藁を作る。妙案を得ず苦心慘澹たり。夜に入るも烈風尙息まず。月色清奇なり。今宵より冬物の寢間着を着る。
朝の中より霧雨ふる。風なし。倦怠感に抗へず午睡一時間半。主治醫を訪ひ藥を乞ふ。家に歸るにやなせたかしの訃報に接す。行年九十四。YouTube にアンパンマンのマーチを聽きて追悼す。この唄は東日本巨大地震發生後の三月十六日夕刻NHKラヂオ第一にて放送されるや、淚が出た、子供たちの笑顏を思出したなど聽取者の反響を呼び、翌日夕方ふたゝび放送せられたり。夜初更ことぶきの湯露天風呂に浴す。湯煙立上りていかにも溫泉らしき風情なり。大雨沛然たり。風は依然として吹かず。BS11ようこそ藝賓館に柳家小ゑんの下町せんべい、三遊亭圓丈の聖なる我が家を聽く。菊池寬賞發表、サザンオールスターズ受賞。余は中川李枝子の受賞を壽がずんばあらず。
アンパンマンのマーチ
作詞 やなせたかし
作曲 三木たかし
唄 ドリーミングそうだ うれしいんだ
生きる よろこび
たとえ 胸の傷がいたんでもなんのために 生まれて
なにをして 生きるのか
こたえられないなんて
そんなのは いやだ!
今を生きる ことで
熱い こころ 燃える
だから 君は いくんだ
ほほえんでそうだ うれしいんだ
生きる よろこび
たとえ 胸の傷がいたんでも
ああ アンパンマン
やさしい 君は
いけ! みんなの夢 まもるためなにが君の しあわせ
なにをして よろこぶ
わからないまま おわる
そんなのはいやだ!
忘れないで 夢を
こぼさないで 涙
だから 君は とぶんだ
どこまでもそうだ おそれないで
みんなのために
愛と 勇気だけが ともだちさ
ああ アンパンマン
やさしい 君は
いけ! みんなの夢 まもるため時は はやく すぎる
光る星は 消える
だから 君は いくんだ
ほほえんでそうだ うれしいんだ
生きる よろこび
たとえ どんな敵が あいてでも
ああ アンパンマン
やさしい 君は
いけ! みんなの夢 まもるため
薄く曇りて風絕ゆ。殘暑漸く去りぬ。體育の日祭日。門巷寂寥。雲の南より北にゆるやかに流るゝさま颱風二十六號の近きを知らしむ。余はこの日錄を書く際 colder 氏の作成せられし秀丸エディタ用 ULTI 大文字小文字變換といふモジュールを愛用す。まづ當用漢字を用ひて執筆せし後、このモジュールを通して一發變換を行ふなり。まことに重寳なれど舊字繁體字の中にはCJK互換漢字含まれ、W3C の勸告によれば HTML5 の塲合これらの互換漢字は極力その使用を避けるべしとのことゝて、使用不可の文字はいづれなるかを探し當てるに連日手間かゝりたりき。本日正規表現を勉强するに、CJK互換漢字を探すにはエディタの檢索欄にて [\uF900-\uFAFF] を指定すれば事足りるを學びぬ。これにより該當の文字は黃色い背景色に黑文字で浮び上がり一目瞭然なり。二更河畔を步す。月よし。殘蛩の聲絲の如し。
快晴。朝風漸く冷なり。表通よりワッショイ/\と兒童の聲聞こゆ。ベランダより窺ふに靑き法被を着たる子供たち金色の神輿を臺車に乘せて牽き行けり。秋祭なり。NHK總合演藝圖鑑に宮川大助・花子の漫才と三遊亭白鳥のスーパー壽限無を聽く。DVDにてダニエル・サンチェス・アレバロ監督の活動寫眞マルティナの住む街 Primos を看る。凡作。夕餉に鯛飯を食す。DVDにて永遠のこどもたち El orfanato を看る。佳作。二更インターバル速步。風死す。九日頃の月皎〻たり。
蚤起。天氣好晴。久振りにて日光を浴びる。補講授業の日なり。咖啡所コメダに朝餉を喫す。一限二限ともに出席者十五人前後。少數精銳なり。語學の授業はこのぐらゐの人數が最もやりやすし。一人づゝ動詞 querer を用ひて會話の練習を行ふ。¿Qué quieres? と問ふに Quiero amigos 或は Quiero una novia guapa と荅ふる學生あるはほゝゑまし。午後T氏來宅。釣果の鯛と魬を餽らる。三時頃より西北の風吹出でゝ俄に烈し。夕餉に鯛の刺身と潮汁を食す。夕刻五時BSフジにて錄畫せし落語小僧に秋月亭大誠光、KOHARU亭けいじろう、日向家ひかる、桂雀々のリレー落語七度狐をきく。夜二更河岸を步す。半輪の月あきらかなり。
陰晴不定。東南の風强し。倦怠感。落語協會インターネット落語會に川柳つくしの眞打披露口上を聞く。師の川柳川柳曰く、早稻田大學敎育學部を卒業し敎員免許を取得、英檢一級、算盤一級の資格を有するも落語には何の役にも立たずと。呵々。初更溫泉。二更雨ふる。
曇りて蒸暑し。咖啡處コメダに朝餉を喫す。客少く講義の準備をするには寔に都合よし。敎室内溽蒸耐へがたし。秋學期は冷房を使ふこと能はざる故發汗忽ち襯衣を霑す。持參したる水筒のアクエリアスを飮みながら講義を行ふ。團扇つかふ學生あり。語根母音變化動詞を練習す。一限を終へるに大汗のためポロシャツしとゞに濡れそぼち、乾きたるところには鹽を吹く有樣なり。歸宅してチノパンを脫ぎて見るに腰より尻にかけてぐつしよりと汗に濡れたり。多汗症なる歟。
空は雨雲に蔽はれ墨を流せしがごとし。颱風の近きが故雲は東南より西北に向ひ、十時過霧雨降來る。風俄に寒し。鳧の鳴くを聞く。二時頃雨霽れて雲間に靑空を望む。五時まで困臥。臥牀より起出づれば暗雲ふたゝび天を蔽ひて濕氣夥し。初更川岸を步す。三重テレビ淺草お茶の間寄席にロケット団の漫才、桂文樂が悋氣の火の玉を聽く。昨日訃報に接したる古今亭志ん馬の畧歷を東京かわら版寄席演藝家名鑑を繙きて調べる。昭和三十三年三月三日生れ、昭和五十六年四月六代目古今亭志ん馬に入門。昭和五十七年二月志ん吉の名を得て前座となる。昭和六十一年九月二つ目に昇進し高座名を志ん次と改む。師匠志ん馬他界せし後、平成六年古今亭志ん朝の門人となり、平成九年九月眞打昇進、七代志ん馬を繼ぐ。出囃子は藝者ワルツ。余は高座に接したることなく、昨年六月三重テレビ淺草お茶の間寄席にて紙入れを聽きしが初めてなり。明朗なる聲と輕みが特長なりき。
雨もよひの空晴れやらず。書齋に孤坐すれば濕氣を帶びたる風肌寒し。欅の葉色づき初む。古今亭志ん馬の訃に接す。享年五十五。胃癌を患ひたる由なり。また演出家パトリス・シェローの訃報もあり。享年六十八。安納芋といふ芋を蒸かして食す。甘み拔群なり。初更理髮舖に赴き、歸途ことぶきの湯に立寄る。二更河畔を步す。BS11ようこそ藝賓館に柳家喬太郎が井戶の茶碗を聽く。生眞面目かつ誠實なる淸兵衞を腹黑き男として描く造形に說得力なし。
空連日曇りて蒸暑し。書齋と寢室の塵を掃ふ。わが網站のマークアップ言語を XHTML 1.1 Strict より HTML5 に變更す。この日錄にて用ゐる漢字は當面のあひだ W3C の勸告に從ひ、ユニコード正規化形式C(NFC: Normalization Form C)の範疇にある文字のみを使ふことゝす。夜初更川緣をあゆむ。櫻樹の葉わづかに色づきたり。
けふも曇りて風なく暑し。桜塚やっくんといふ藝人交通事故に遭ひ急死す。デイリースポーツの報ずるところによれば、山口縣内の中國自動車道を運轉走行中に中央分離帶に衝突し、追越し車線に止りたる車より降りしに後續車に轢かれたりといふ。日本テレビ系列エンタの神樣に出演せし藝人の中友近と彼には好感を覺えたりき。氏が演じたるスケバン恐子の決め臺詞に倣へばがっかりだよ!と叫びたき心地す。Eテレ日本の話藝に桂文珍のけんげしゃ茶屋を聽く。晡時インターバル速步。氣溫攝氏三十度近くに逹してやゝ蒸暑し。
舊九月朔。曇りて風なし。秋冷窓紗を侵す。十日ぶりに父上母上と食事す。昨夜までは書齋にて獨り食したりき。セキセイ鸚哥の好物オーツ麥殘りわづかになりたれば樂天の愛玩動物店に十袋注文す。三善晃歿。行年八十。夕刻に至りて妙に生暖かくなりぬ。夜に入りても寒からず。二更坡上を步す。六代春風亭柳朝の鹿政談を聽く。
陰天。旦暮風の冷なること早くも初冬の如し。二時川端を步す。市委託の作業員堤防の斜面に生茂りし雜草を刈取りゐたり。茶請に毬藻羊羹を食す。初更溫泉。二更ふたゝび堤上をあゆむ。榮養不足の故にや體に力入らず足どり重し。闇に包まれし放水路の堤防下に人影あり。步みをゆるめてよく見れば抱擁接吻する男女なり。街燈の明りもとゞかぬ闇中なれば年齡は定かならざれど、二十代後半ぐらゐなるべし。女は男の首に兩腕をきつく卷きつけ頰ずりしまた接吻す。男の足許にはボストンバッグ一個置きてあり。人目を忍んで闇中に逢瀨を樂しむ二人を見て余は羨望嫉妬の情はいさゝかも覺えず、愛し合ふ戀人たちに幸あれかしと祈るばかりなり。この心境の變化は老年に逹したるが故なるべし。
陰晴定らず。咖啡所コメダに朝餉を喫す。客少し。午前授業。先週は休講にしたれば今日が秋學期初囘なり。二箇月振りに學生に會ひ氣分稍平生に復することを得たり。春學期末試驗の答案を返却し、語根母音變化動詞を解說す。暑きこと晚夏のごとし。然れど强き西風は濕氣を含まず爽かなり。晡時河畔を步す。十日振りなり。金木犀馥郁人の面を撲つ。二更ふたゝび河岸をあゆむ。夜に入るも風息まず。この秋初めて柿を食ふ。
朝晚く疲れし睡眠より覺むれば今日もまた旣に午に近し。快晴の空澄渡りて俄に薄暑を催す。茶請に千秋菴ノースマンとわかさいもを食す。珍しく草蘆裏の超級市塲にて賣られしものなり。慈君の談によれば百貨店はいづこも北海道物產展ばかりといふ。三重テレビ淺草お茶の間寄席の放送日時金曜午後八時なりしが今月より水曜午後九時午後七時となる。
舊八月廿七日。晏起旣に午に近し。隂。無風。主治醫を訪ひ診察を乞ふ。レメロンとウインタミン增量せらる。市中水田の稻旣にほゞ刈取られたり。夜初更ことぶきの湯。稻葉町の稻は未だ刈られず。