天氣晴朗一點の雲なし。門巷寂寥深夜の如し。交叉點の便利店に赴くに向ひの給油所に自働車次々と來て給油また洗車をなす。ガソリン價格百九圓。本年も早や大晦日となりぬ。今年は思ひかけずマヌエル・プイグの戲曲薔薇の花束の祕密を飜譯上演する僥倖に惠まれ、いつになく幸福なる歲暮を迎へたり。札幌の菓か舍といふ菓子屋の札幌タイムズスクエア宇治抹茶と銅鑼燒を食す。夕餉に一ノ藏ひめぜんを飮み手卷壽司茶碗蒸を食す。
快晴。寒氣甚しからず。本年の師走ほどあたゝかき年は罕なり。小說執筆。N子アップルパイを燒く。味佳し。夕餉に鱈塲蟹を食す。
蚤起。晴れたる空に白雲多し。風やゝ寒し。小說執筆。正午ことぶきの湯露天風呂に浴す。N子は慈君と倶に成城石井に買物に行きたり。BS11藝賓館に柳家さん喬一門會①を見る。柳家さん助雜俳、柳家小傳次のめる、柳家喬志郎獻立を聽く。夕餉に銀杏飯鰆の粕漬テリーヌ乾酪オリーブを食しサングリアを飮む。
死人の下駄
人間といふものは、生れて來る時下駄を穿いて來なかつた故か、身投でもして死ぬる時は屹度履物を脫いでゐる。それも其邉へだらしなく放り出さないで、きちんと爪先を揃へた儘脫ぎ捨てゝゐる。恰で借りた物を返すといつた風だ。得て投身でもする人は、借りた金を返さないやうな輩に多いが、履物だけは自分の持合せでありながら借物でゝもあるやうにきちんと取揃へてゐる。だから芝居でもそれに倣つて、舞臺で情死者の身投をする時には、俳優は極つたやうに履物を揃へる。
それも古風な身投などの塲合に限らず、電車や汽車で轢死をする塲合にも、履物だけはちやんと揃へてゐるから可笑しい。どんな粗忽屋でも下駄を履いた儘で軌道に飛び込むやうな無作法な事はしない。家鴨が外套を脫いで鴨鍋へ飛び込むやうに、自殺でもしようといふ心掛のある者は、履物を脫ぎ揃へて軌道に橫になる位の儀式はちやんと心得てゐる。
電車の車掌なども、轢死者があつた塲合は、其奴が男か女か、老人か子供か、馬鹿か悧巧かを吟味する前に、先づ履物を調べる。そして履物がちやんと揃へて脫ぎ捨てゝあるのを見ると、
「占めた。やつぱり自殺だつた。」
と、吻と胸先を撫でおろすさうだ。だから間違つて電車に轢き殺される塲合には、成るべく履物を後先へ、片々は天國へ、片々は地獄へ屆く程跳ね飛ばす事だけは忘れてはならない。さもないと、自殺に定められて、慰藉金も貰へない上に、理窟の立たない厭世觀さへ抱かされるやうな事になる。同じ淵でも身投をする塲所は大抵定つてゐるやうに、長い電車線路でも轢死する塲所は、大抵見當がついてゐるさうだ。だから、狡い運轉手になると、その區間だけは速力の加減をする事を忘れない。
もしか大隈伯が身投でもする塲合には、矢張履物を脫いで、義足を露出しに死ぬるだらうかと疑つた者がある。すると、いやあの人の事だ、死ぬ前に義足は割引で賣つてしまふだらうと言つたものがある。
(薄田泣菫『完本 茶話 上』冨山房百科文庫)
陰晴定らず。小說執筆。谷沢永一浦西和彦編薄田泣菫著茶話(冨山房百科文庫)上卷を讀む。帶の惹句繙書不覺破顏了に僞りなし。燈刻地下鐵道驛にN子を出迎へる。今朝京都に赴き鞍馬山を登りて鞍馬寺と貴船神社を參詣したりと云ふ。夕餉にサングリアを飮み海鮮丼風呂吹き大根慈君自製の燒豚を食す。
畫家と書物
むかし今津に米屋與右衞門といふ男が居た。富豪の家に生れたが、學問が好きで色々の書物を貪り讀んだ。珍らしい働き手で、酒男と一緖に倉に入つてせつせと稼いだから、身代は太る一方だつたが、太るだけの物は道修繕、橋普請といつたやうな公共事業に費して少しも惜まなかつた。亡くなつた時には方々の人がやつて來て聲を立てゝ泣いた。なかに一人智慧の足りない婆さんが交つてゐて、おろ/\聲で、
「これ程學問してさへこんな好いお方だつたから、もしか學問などしなかつたらどんなにか立派な人だつたろうに。」
と言つたさうだ。
婆め、なか/\皮肉な事を言ひをるわい。(薄田泣菫『完本 茶話 上』冨山房百科文庫)
晴。朔風强し。NHK總合演藝圖鑑に国本武春追悼特輯を聽く。紺屋高尾と佐倉義民傳甚兵衞渡りの二曲なり。小說執筆日課のごとし。N氏の來書に接す。去月末ベオグラード大學の職を辭しヘルシンキに移り住はるゝ由。アットエフエムに山下達郎サンデー・ソングブックを聽く。年末恆例夫婦放談第二囘なり。竹内まりやが歌ふフライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン、ユア・ゴナ・ルーズ・ザット・ガール(邦題戀のアドバイス)、テキーラ・サンライズを聽き得たり。三重テレビ淺草お茶の間寄席に古今亭今輔のだまされたフリ作戰、立川談幸の肥がめ、春風亭小柳枝の時そばを聽く。談幸は立川流を去りて落語藝術協會に移り晴れて寄席に出演したり。
半陰半晴。北風吹きて寒し。BS-TBS落語硏究會に五街道雲助の木乃伊取りを聽く。咖啡を煮てS子自製のクッキーとブラウニーを食す。美味なり。スポニチアネックスの記事を讀むに一昨日山下達郎氏盛岡市岩手縣民會館にて演奏會を催せしが、喉の調子惡しく途中にて中止せられし由。後日振替公演を催すといふ。J-CASTニュースの報ずるところによれば演奏會の半ば九十分に至る頃に一定の音域出にくゝなり、このまゝ公演を續けることはお客樣に對して不誠實と判斷して已むを得ず中止せられたり。職人の矜持といふべし。
乍陰乍晴。西北の風强し。Eテレえほん寄席に古今亭菊之丞の壽限無を聽く。小說執筆。SHOUTcastの降誕祭專門局にクリスマス歌曲を聽く。ビング・クロスビー、フランク・シナトラ、ペリー・コモ、アンデ・ウィリアムス、ナット・キング・コール、エラ・フィッツジェラルド、ローズマリー・クルーニー、イーディ・ゴーメ、エルヴィス・プレスリー、ディーン・マーティン等々。S子聖誕祭の贈り物とて自製クッキーとブラウニー、Tabioの靴下を贈らる。午後ことぶきの湯露天風呂に浴す。夕餉にタンシチューを食す。雲の切れ目に滿月を見る。
快晴。あたゝきこと春の如し。国本武春の訃報に耳を疑ふ。行年五十五なりと。東京かわら版新年號屆く。寄席初席の主任を確認す。鈴本演藝塲第一部市馬、第二部菊之丞、第三部三三。淺草演藝ホール第一部木久扇、第二部小朝、第三部正藏、第四部さん喬。新宿末廣亭第一部昇太、第二部歌丸(前半)竹丸(後半)、第三部文治。池袋演藝塲第一部遊三、第二部小遊三、第三部小柳枝。昨夜錄畫し置きたるBS日テレ笑點特大號に三遊亭小遊三の時そばを聽く。ヤマト運輸集配所に赴きS子に食料品一箱送る。市役所の寒暑計十八度を示す。
雨もよひの空なり。風寒し。天皇誕生日。戰前ならば天長節と呼ぶべき日なり。セキセイ鸚哥のアサリ君シヾミ君予が朝餉のレタスを貪り食ひて飽くことなし。アサリ君は予の箸にとまりて先端をぺろ/\舐めること日課のごとし。晝前折疊み傘を鞄に入れて地下鐵道の乘り名驛に出づ。祝日にしては乘客尠し。十二時半新幹線こだま號自由席に乘る。乘客いつものことながら數ふるばかりなり。車中筆記型電腦を用ひて小說執筆。一時四十六分靜岡驛にて降り、東海道線熱海行きの列車に乘換へ東靜岡に抵る。二時過靜岡藝術劇塲に赴く。座席先週土曜と同じG列九番なり。二階席三階席は客をらず、一階席も壁際に若干空席あり。二時半薔薇の花束の秘密千穐樂公演を看る。角替さん美加理さん共に臺詞囘し愈〻こなれて演技さえわたり患者と付添婦の人物像自ら躍如たり。最後の塲面に至りて予は感淚を禁じ得ず。カーテンコールの拍手鳴りやまず、白きカーテンの前に兩人現るや看客次々に立上りて喝采す。樂屋に角替さん美加理さんを訪ひ祝福す。制作部T氏來りて九時半より祝賀の宴ある由を告げらる。時計を見るに未だ六時前なり。三時間ほど待つことになりしかば何處か喫茶店にて執筆せむとて一旦劇塲を出づ。雨降り出しぬ。コンコルドといふパチンコ屋の方へ步むに咖啡所コメダあるを見て入る。喫煙席の卓子に筆記型電腦を廣げて執筆す。瞬く中に九時となる。ふたゝび劇塲に赴き事務室にてS氏と暫く歡談。S氏は予と同じく東京外國語大學の卒業生にて柬埔寨語を學べり。西ヶ原にありし舊學舍の想ひ出を語り合ふ。九時半制作部T氏の運轉する自働車にて制作部K氏と倶に中華料理店に赴く。予等が一番乘りなり。姑くして森新太郎氏、次いで角替さん來る。乾杯し互に勞をねぎらひ款語す。十時近く美加理さん來る。一同あらためて祝杯を擧ぐ。予は最終の新幹線に乘るため、後ろ髮引かるゝ思ひにてほゞ入替りに辭去す。美加理さん予に一輪の薔薇を餽らる。T氏ふたゝび雨中車を運轉して靜岡驛に予を送らる。十時二十八分發名古屋行き新幹線こだま號にて靜岡を發す。自由席滿席なりしが幸にして一つ空席あり坐り得たり。名古屋驛より地下鐵道に乘りて家にかへれば十二時半なり。
快晴。北風强けれど日はうらゝかにて寒からず。小說執筆。驛前の理髮舖に徃く。店繁昌し先客七名。待合室の椅子に坐り待つこと一時間二十分。然れど文春文庫の高島俊男著お言葉ですが…④廣辭苑の神話を味讀して退屈せず。歸途眼鏡屋に立寄りブリッジを修繕せしむ。修理代無料。午下家にかへる。晡時主治醫を訪ひ藥を乞ふ。舊病棟本館解體されぬ。いつもの溫泉に一浴す。夕餉に鯛の刺身潮汁冬至南瓜を食す。今宵も羊羹を料理す。寒天と粗目糖を溶かして琥珀色の液を作り漉餡を入れて練る。昨夜は練る時間やゝ短く出來榮えに不滿を覺えたれば今夜は丹精こめて二時間四十分練りぬ。MP3播放器にてカシオペアの昭和五十八年NHK-FMセッション83演奏會及び昭和六十年兩國國技館演奏會の錄音を聽きつゝ篦を只管動かすなり。二更完成す。
寒雨蕭條。空暗きこと黃昏の如し。咖啡所コメダに朝飯の小倉トーストを喫す。九時半過MOVIX三好一番館に徃く。三百三十二人收容の看客席ほゞ滿席なり。予は松竹SMT會員ポイントを景品と交換して無料鑑賞券を得たり。十時J・J・エイブラムス監督の活動寫眞スターウォーズ/フォースの覺醒を看る。二十分ほどして臺本の粗雜なるに一驚を喫す。俳優の演技拙劣にて物語を支へる技倆なし。役者の演技をうまく引出さゞるは監督の演出力不足によれるなり。一時間を經ずして作品への興味を失ひぬ。脚本拙劣、演技陳腐、演出稚拙。二時間十六分は拷問の如し。午下家にかへる。T氏釣果の鯛を餽らる。夕餉の後羊羹をつくる。平鍋にカップ四杯の水を入れ寒天三本を煮溶かし、粗目糖一キログラムと栗甘露煮の蜜を入れて砂糖粒の消ゆるまで煮溶かす。昨日作りし漉餡を加へて篦にて練ること二時間ばかり。隱し味の鹽を少々加へて三つの型に流しこみ、うち一つに栗を入れて完成す。明晚も作るなり。
晴。NHK總合桂文枝の演藝圖鑑最終囘を看る。江戶家猫八珍しく紋付の着物を着て座布團に坐り演ず。鶯杜鵑蛙鈴蟲鶴の聲を鳴分ける。桂文枝誕生日を語る。今年も御節料理の羊羹をつくる時節とはなりぬ。一晚水につけ置きたる小豆一キログラムを大鍋二つに分けて火にかける。一時半ほどしてふつくらと煮えたり。流しに大きなるボウルを置き左手に裏漉しを持ち右手にお玉杓子を握り、豆を掬ひて篩に空けては杓子の腹にてごし/\と丹念に濾す。濾したる汁を晒し布袋に入れてきつく絞れば漉し餡の出來上りなり。三時過完成。Eテレ日本の話藝に桂文珍の寢床を聽く。見臺膝隱しは使はず。
天氣好晴。祁寒昨日の如し。小說を執筆しつゝNHKラヂオ第一眞打競演に入船亭扇遊の鮑のしを聽く。午下地下鐵道に乘り名驛に出づ。年末の土曜日にしては人出少なし。二時新幹線こだま號にて名古屋停車塲を發す。車中小說執筆。乘客また少なし。三時過靜岡に着く。東海道線に乘換へて東靜岡下車。グランシップ裏手なる喫煙所にて一服し靜岡藝術劇塲に赴く。座席G列九番。二列前の椅子に東京大學のY君來りて在り。久闊を敍す。四時薔薇の花束の秘密開演。角替さん美加理さん共に科白の言ひ囘しこなれて演技にも磨きがかゝりたり。休憩の折ホワイエに赴くに和服の女性莞爾として予を見つめらる。東京藝術劇塲のOさんなり。Oさんは平成四年予がヌリア・エスペル演出坂東玉三郎主演の芝居エリザベスの臺本を飜譯せし時銀座セゾン劇塲の制作を擔當せられし人にて、予にとりては恩人なり。最後にお目にかゝりしは平成七年再演の時なりき。思はず抱擁して二十年ぶりの再會を祝ひぬ。看客席に戾りて第二幕を看る。極上の出來なり。カーテンコールの拍手鳴りやまず。Oさん來りて、いゝ話ねえと目を潤ませらる。終演後Y君、靜岡大學H君と同僚Oさんと倶に靜岡驛北口なる居酒屋庄屋に飮む。歡語時の移るを忘る。夜二更店先にてH君Oさんと別れ、Y君と驛に赴き、東京に歸らるY君と新幹線改札口にて別る。十時半ひかり號自由席に乘る。滿席なれど豐橋驛にて大半の乘客降りたり。十一時二十分名古屋に着く。地下鐵道に乘りて家にかへれば夜は三更なり。
快晴の空澄渡りぬ。昨日まで靑空を仰がること殆旬日に及べり。Eテレえほん寄席に柳家三之助の轉失氣を聽く。小說執筆。午後ことぶきの湯露天風呂に浴す。寒風吹けど湯加減絕妙にて極樂に在るが如き心地す。地獄極樂は何處にある、地獄極樂はこの世にある、樂しい時が極樂、苦しい時が地獄なりとは落語の枕にて屢聞くところなり。この夜半月あきらかなり。
半陰半晴。寒風凛冽。咖啡所コメダに朝飯を喫す。九時出勤。動詞點過去形の規則活用を講じ作文を練習す。一限にては授業改善のための意見調査を行ふ。用紙の配布と囘收は學生二名が擔當する規定なり。いつも最前列にて聽講するHさんMさんを指名して依賴するにMさんお任せ下さいと快活に應へくれたり。本年最終授業は恙なく終りぬ。早稻田交叉點の舊ミニストップ跡地にファイントラストといふ中古車販賣店出店準備中なり。一時過家にかへる。本日Vectorにて紹介せられしインデックス作成型全文檢索ソフトDocFetcherを試みに使ふ。九千ファイルの索引作成に要する時間僅一分半。一驚を喫す。檢索もきび/\と動作して使い心地よし。予が四年前より愛用するbutterfly_searchも頗重寳するなれど、索引作成には十分ほどかゝるなり。
雨もよひの空晴れやらず。書窓黯澹薄暮に似たり。小說執筆。思ひかけずT君の端書を得たり。T君は予が惠庭市立和光小學校に三年間學びし時三四年次の同級生たりしなり。文面によるに過日恩師M先生を訪ひて予の事を思出しぬといふ。今は北廣島市に住する由なり。Mozilla の瀏覽器 Firefox 43 に昇級す。この版よりモジラ社の檢證を經ざるアドオンは使用禁止となりしが、予は keyconfig、functions for keyconfig、LoL など舊きアドオンを愛用するなれば about:config を開きて expinstall.signatures.required の値を true より false に變更して無事使ひ續けるを得たり。
連日曇天。風生暖かく薄手のスヱータ一枚着て外に出でゝも寒からず。高松にては昨日梅の花開きたりといふ。小說執筆。咖啡を瀹て長野小布施堂の栗鹿の子ケーキを食す。午後ことぶきの湯露天風呂に半身浴をなすこと三十分ばかり。入浴後體重をはかるに入浴前に比して一キロ四百グラムも減りぬ。BS11藝賓館に姉樣キングスの音曲漫才を聽く。予が二人の藝を見るはこの夜が初てなり。左に桂あやめ、右に林家染雀、それ/″\藝者の着物に島田の鬘をかぶり、あやめはバラヽイカ、染雀は三味線を彈く。二人の立姿は妙に見映えして、あやめの語り小氣味よく染雀が合の手も愛敬あり。小唄都々逸阿呆陀羅經に覺えず聽入りたり。
空またもや曇りて暗し。小說執筆例の如し。去十一日十勝每日新聞に佐々木孝先生の取材記事揭載せらる。福島第一原發事故後の日本に暮す萬人必讀の記事なり。先生の許可を得て此處に公開す。急用ありて東京大學T氏京都大學T氏に電子郵件を送る。直に返信に接す。三省堂今年の新語十傑を發表す。
順位 | 語句 |
---|---|
大賞 | じわる |
二位 | マイナンバー |
三位 | LGBT |
四位 | インバウンド |
五位 | ドローン |
六位 | 着圧 |
七位 | 言うて |
八位 | 爆音 |
九位 | 刺さる |
十位 | 斜め上 |
予はインバウンドと着圧といふ語を知らざりき。
曇りて暗し。兩三日異例の暖氣なり。NHK總合演藝圖鑑に三遊亭金馬の本膳を聽く。昨夜錄畫し置きたる三重テレビ淺草お茶の間寄席に柳家一九が目黑のさんま、三遊亭天どんのあくび指南、春風亭柳好の尻餠を聽く。小說執筆。Eテレ日本の話藝に三遊亭小遊三の幇間腹を聽く。輕妙なる枕に思はず笑ひ、噺に入りても聲の調子は律動を失はず。滑稽噺の手本ともいふべき高座なり。この夜アサリ君の體重をはかるに三十五グラムあり。遂にセキセイ鸚哥の標準體重に達しぬ。慶賀すべし。
隂。氣溫昨日に比すれば稍低し。NHKラヂオ第一眞打競演に古今亭菊之丞の子は鎹を聽く。地下鐵道に乘り名驛へ出づ。十二時半新幹線こだま號にて名古屋驛停車塲を發す。乘客いつものことながら數ふるばかり。車中小說執筆。一時四十六分靜岡にて下車、東海道線熱海行きの電車に乘替へ東靜岡にて降り靜岡藝術劇塲に赴く。二時半薔薇の花束の秘密を看る。二階席三階席ともに客をらず、一階席も端の方に空席目立ちたるは殘念なり。芝居後半に及びて角替さん科白二三言ひ間違へしが大事には至らず。終演後樂屋を訪ふ。角替さんは二時間半を越える芝居の劈頭より終幕まで一度も退塲せず舞臺に出突つ張りなるが故、連日の公演に疲勞蓄積して思はず科白を言ひ違へたりといふ。美加理さんは來週水曜にマチネとソワレの二囘公演を行ふを控へて緊張の面持ちなり。東靜岡驛より電車にて靜岡に出で、六時半の新幹線こだま號に乘る。車中ふたゝび小說執筆。七時四十分過名驛に着く。家にかへれば八時半なり。小雨ぽつ/\降り來れり。
雨は霽れしが暗雲去らず、東南の風吹き狂ひて暴暖四月の如し。Eテレえほん寄席に柳家さん喬の死神を聽く。繪は先月晦日に物故せし水木しげるなり。小說執筆。午後いつもの混堂に徃き露天風呂に浴す。昏刻乘合自働車と地下鐵道に乘り今池に出で、今池ガスホールに赴く。柳家さん喬獨演會なり。滿席。開口一番は二ツ目に昇進せし柳家やなぎなり。北海道別海町出身の由にて、マクラに酪農を營む實家の牛の話を延々十五分も語りて辟易せしむ。噺は初天神なり。團子の蜜を嘗め盡したる父に息子が不平を鳴らして早々にサゲたり。さん喬富久を語る。噺の幕開けと同時に突然睡魔に襲はれ殆支ふること能はず。看客の哄笑に驚きて睡を破られること一再ならず。予は迂闊にも夕食後に服する抗鬱劑レメロン十五ミリグラム錠を二錠飮みて會塲に來れり。レメロンには眠氣を催す副作用あり。この調子にては仲入後も眠り續けて周圍の人に迷惑をかけること必至なれば、後半の高座は諦めて早々に歸途に就けり。
曇りてなまあたゝかし。咖啡所コメダに徃き小倉餡と燒麵麭を命ず。九時出勤。現在完了形の練習を終へる。來週は年内最終授業なり。午後小說執筆。昨日午後一時BSプレミアムにて錄畫し置きたる小津安二郎の秋日和を看る。佐分利信中村伸郎北龍二の惡だくみに笑ひ、岡田茉莉子にこつぴどく叱りつけらるゝ三人の姿に呵々大笑す。夕刻より雨降り出しぬ。
小春を思はせる好天氣打つゞきぬ。小說執筆。昨日午後一時BSプレミアムにて錄畫し置きたる小津安二郎監督の活動寫眞彼岸花デジタル修復版を看る。色彩のあざやかなるに一驚を喫す。
快晴。風あたゝかなり。演劇愛好家まねきねこさん去五日薔薇の花束の秘密初日をご覽になり公演レポートを公開せらる。小說言葉におぼれて執筆。大阪蓬萊の豚饅を食す。晡時主治醫を訪ひ藥を請ふ。歸途いつもの溫泉に立寄り露天風呂に浴す。BS11藝賓館に三遊亭遊馬の佐野山を聽く。聲を張上げずに傾聽せしむる口跡よろしく緩急自在、覺えず噺に引込まれぬ。神田北陽に講談を敎はり落語に仕立たりといふ。昨年十月東京藝術劇塲にて催せし藝歷二十周年紀念公演の蛙茶番、佐野山、紺屋高尾の三席が評價されて平成二十六年度藝術祭藝能部門大賞を受賞したるも宜なるかな。
空隈なく晴れわたりしが風存外寒し。大雪の候なり。深夜零時BSプレミアムにて錄畫し置きたるNODA・MAP公演エッグ再放送を半分ばかり看る。小說執筆。菫色の晚霞描くが如し。
隂。昨夜は興奮さめやらず寢に就きしは四時過なり。Eテレ日本の話藝に金原亭伯樂のお直しを聽く。小說執筆。每日新聞の網站意匠改惡せらる。主要記事の見出しは數ふるばかりにて、政治經濟などの見出しは畫面の一番下までスクロールせざれば見えず。歐米の新聞はあらゆる分野の記事の見出しにリードを添へて一覽せしめ、トップページを通覽すればほゞすべての記事の内容を窺ひ知り得るなり。
隂。寒氣甚しからず。NHKラヂオ第一眞打競演に古今亭志ん輔の轉宅を聽く。昨朝錄畫し置きたるEテレえほん寄席に桂文治の平林、また昨夜錄畫せし三重テレビ淺草お茶の間寄席に柳家はん治が妻の旅行、隅田川馬石が粗忽の釘、柳家小さんの長短を聽く。午下地下鐵道に乘り名驛に出で、一時發の新幹線こだま號に乘る。先發ののぞみ號に急病人あり、搬送せらるゝを待ち定刻より五分ほど遲れて名古屋驛停車塲を發す。車中筆記型電腦を用ゐて小說執筆。三時過靜岡に着す。東海道線に乘換へ東靜岡驛下車、グランシップの裏なる喫煙所に一服して靜岡藝術劇塲に赴く。四時薔薇の花束の秘密一般觀客向け公演の初日を看る。豫想以上の成功なり。角替さん美加理さん共に總けいこの時と較べて臺詞をやりとりする拍子早まり、緩急の間合もよろしく人物像いよ/\鮮明になりたり。看客時に大に笑ひ、時に固唾を飮みて演技を凝視す。角替さんは皮肉と諧謔を以て成功し、美加理さんは類稀なる身體能力と三人の人物の演じ分けを以て成功し、照明の大迫氏は絕妙なる陰翳を以て成功をなしたり。カーテンコール二度ありて客電燈りし後も看客の拍手鳴りやまず、兩名幕の前にまた現れて深々とお辭儀したり。終演後一階ロビーにてアナウンサア中井美穂さん、演出家森新太郎氏、藝術監督宮城聰氏の三氏による討論會あり。聽衆大勢。終了後樂屋に角替さん美加理さんを訪ひ成功を祝福す。八時制作部K氏自働車を運轉して三氏と予を寳壽司に招き晚餐を饗せらる。中井さんは大の芝居好きにて、演劇論に花咲き諧語時の移るを忘る。靜岡驛にて中井さんと別れ、新幹線ひかり號に乘り名古屋に至る。家にかへれば夜は四更にならむとす。
曇りて暗し。寒氣凛冽。午前ことぶきの湯に浴す。體育館南交叉點の名古屋銀行店舖解體されぬ。歸途グリーンロードのロイヤルホームセンターに立寄りセキセイ鸚哥の餌を買ふ。小說執筆。晡時乘合自働車に乘り地下鐵道驛に行きスターバックスに憩ふこと半時ばかり。地下鐵道にて榮に出で中電ホールに赴く。柳家三三獨演會なり。座席Q列三番。眼の前のP列は珍しく六人分空席にて見晴らしよし。舞臺は中央に紺色の毛氈を敷きたる高座に白き座布團一枚あるのみ。正眞正銘の獨演會なるを以て開口一番を語る前座は居らず、從つてめくりもなし。上手より三三登塲し、旅公演の土產話を披露して下手糞なる噺家を揶揄するマクラを振つて一席目道具屋を語る。サゲのお雛さまの首が拔けますにて終りかと思ひしに、續けて相田みつを風の詩を讀み、下手糞でもいゝぢやないか、××だもので下げ、會塲爆笑の巷と化す。前座噺なれど一言一句疎かにせず風格を感ぜしむ。一禮して高座にとゞまり、二席目は小佐田定雄の新作龜の甲を語る。奇想天外捧腹絕倒、看客やんやの喝采を送る。十分休憩の後三席目は妾馬なり。家にかへれば九時半なり。あしたひろしの訃報に接す。去月三日老衰にて死去せらる。行年九十三。
風雨瀟瀟たり。咖啡所コメダに朝飯を喫す。九時出勤。講義前半は過去分詞の形容詞的用法を敎へ、後半は息拔きがてらレストランの自作獻立表を配布し、予が給仕人を演じ學生諸氏客となりて注文のやりとりを練習す。全員眞劍に料理を選ぶさま愛らし。和氣藹藹たり。二コマ終へれば雨は霽れしが暗雲去らず。一時過家にかへる。小說執筆。ジャストシステムの網站にATOK2016プレミアム版を注文す。けだし精選版日本國語大辭典搭載されたるが故なり。
快晴。寒氣ゆるやかなり。アサリ君とシヾミ君朝食のレタスを貪り食ふ。地下鐵道に乘り名驛へ出で、十一時半東京行の新幹線こだま號にて名古屋停車塲を發す。乘客數ふるばかりなり。筆記型電腦を用ゐて小說執筆。十二時四十八分靜岡驛下車、東海道線に乘換へ東靜岡に至る。一時過靜岡縣舞臺藝術センターに赴く。制作部T氏K氏、また藝術局長N氏出迎へらる。一時半靜岡藝術劇塲にて薔薇の花束の秘密惣ざらひ(通稱ゲネプロ)を看る。角替さん美加理さん共に生き/\と演じて水を得たる魚のごとし。この小屋の舞臺面は幅奧行ともに廣く、女優二人のみの芝居なれば空間をもてあましはせぬかと窃に虞れしが、大迫氏による照明見事に濃密なる演技空間を出現せしめ、予の心配は杞憂に終りぬ。時に聲をあげて笑ひ、時に暗淚を催して二時間半近き芝居は瞬く中に過ぎたり。申し分なき出來榮なり。稽古終了後演出家森新太郎氏角替美加理兩氏に感想を陳ぶ。明日の初日は何の心配もなかるべし。T氏自ら自働車を運轉して予を靜岡驛に見送らる。五時二十九分新幹線のぞみ號に乘る。乘客はやはり纔かに十數人ばかり。家にかへれば七時半なり。
舊曆十月廿日。蚤起。空好く晴れて風强けれど日向はあたゝかなり。小說執筆。正午齒科醫A氏を訪ひ定期檢診を受く。別狀なく、今迄通り齒磨きを勵行されたしと云はる。午後慈君の使ひ古されたる吹風機壞れて新しき品を購ひたしと云はれしかば、自動車を運轉して瀨港線のエディオンに連れ行く。歸途は乘合自働車を利用せらるゝ由。慈君と別れていつもの溫泉に浴す。スタンプ三十個貯まりて無料入浴優待券を得る。さらに囘數券の抽籤番號が二等に當たり、もう一枚優待券を得たり。囊中旣に七枚あり。浴後體重を量るに十七貫七百七十匁なり。秋以來氣分すぐれずインターバル速步を怠りしにも係らず幸にして肥えず。晡時家にかへる。須臾にして慈君歸宅せらる。BS11藝賓館に柳家喜多八のやかんなめを聽く。喜多八の談によれば、この噺は柳家小三治が某テレヴィジョン番組の依賴を受けて速記本より起したるものなり。また喜多八といふ高座名は眞打昇進の折に鈴本演藝塲支配人が名づけて吳れしとぞ。自由國民社本年の新語流行語大賞を發表す。銓衡委員は姜尚中俵万智鳥越俊太郎室井滋やくみつる箭内道彦清水均の七氏なり。予はアベ政治を許さないとSEALDsを推すなり。
部門 | 語句 | 受賞者 |
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年間大賞 | 爆買ひ | 羅怡文(ラオックス株式會社代表取締役社長) |
年間大賞 | トリプルスリー | 柳田悠岐(福岡ソフトバンクホークス) 山田哲人(東京ヤクルトスワローズ) |
十傑 | アベ政治を許さない | 沢地久枝 |
十傑 | 安心して下さい、穿いてますよ。 | とにかく明るい安村さん |
十傑 | 一億總活躍社會 | 安倍晉三 |
十傑 | エンブレム | 東京五輪殘奧會競技大會組織委員會 |
十傑 | 五郎丸(ポーズ) | 五郎丸步(ラグビー日本代表) |
十傑 | SEALDs | 奥田愛基(SEALDsメンバー) |
十傑 | ドローン | 野波健藏 (千葉大學大學院工學硏究科工學部特別敎授) |
十傑 | まいにち、修造! | 松岡修造(プロテニスプレーヤー) |
この冬始めて湯婆子を抱いて臥す。