惡夢を見る。曉明河岸を步す。輕鴨七羽。晡刻主治醫を訪ひ藥を請ふ。ことぶきの湯露天風呂に浴し、いなやに飰して歸る。
快晴。昨日に劣らず薄暑を催す。拂曉河畔を步す。鳧一羽、輕鴨六羽。金木犀の香り天下に滿つ。ベランダの朝顏今朝も八輪花ひらく。晡時接骨醫Ｔ氏を訪ふ。夕餉の後ナイアガラといふ品種の葡萄を食す。懷かしき味はひなり。母上ナイアガラを食する時はいつも長嶋茂雄の引退を思出すといふ。かつて大麻の舊宅に住せし折ベランダにて栽培せしナイアガラ豐作にて、衣類箱二つを要するほどの收穫あり。一箱を知人に贈らむとて余を助手席に乘せ車を運轉する中、ラヂオより長島茂雄の引退式典中繼聞え、巨人軍は永久に不滅ですの演說を耳にしたりといふ。四十年前の話なり。
快晴の空雲翳なし。香流川の畔を速步することいつもの如し。金木犀の花一時に滿開となる。輕鴨九羽。ベランダの朝顏今朝も八輪咲きぬ。每日新聞の報道によるに御嶽山頂上にて七人意識不明、二十七人負傷。土井たか子歿。享年八十五。NHKラヂオ第一放送に大相撲秋塲所千秋樂の中繼を聞く。新入幕逸ノ城安美錦を押し出して十三勝二敗。敢鬪賞と殊勳賞を獲得す。一敗の白鵬鶴竜を下手投げにて破り優勝。暮方の空に絲の如き三日月を見る。
曇天。NHKラヂヲ第一キャンパス寄席に古今亭菊之丞の轉失氣を聽く。正午前木曾御嶽山噴火。NHK總合テレビ夕刻より臨時ニュースを流す。Ｅテレに大相撲秋塲所中繼を見る。結びの一番白鵬對逸ノ城戰、橫綱上手出し投げにて貫祿を見せたり。
晏起。空どんよりと曇りて風なし。河畔を步す。金木犀の花香早くも漂ひ始めて人を醉はしむ。いつもの年ならば十月初旬に咲くべき花なり。今秋の寒さ尋常ならず。輕鴨六羽。ベランダの朝顏八輪花をつくりたり。BS1にてニューヨーク・ヤンキーズ對ボルチモア・オリオールズ戰を看る。本年を以て引退するヤンキース主將デレク・ジーターの本據地ヤンキース・スタジアムに於る最終戰なり。適時打を打ち二點とり、守備にては遊ゴロを倂殺に仕留め看客大喜びなり。先發投手黒田好投し八囘裏を終へて五對二と試合を優位に運び、九囘裏ジーター最後の守備につくや看客總立ちになり Derek Jeter, Derek Jeter! の大歡聲小止み無し。黒田に代りて登板せし抑への切札ロバートソン本壘打二發を浴びて三點獻上し五對五の同點となる。九囘裏先頭打者左翼前に安打を放ち、續く打者は定石通り送りバントを決めて一死二壘となりジーター最後の打席に立つ。初球の外角球を見事右翼前に運び二壘走者生還して劇的なるサヨナラ勝ちを收めぬ。野球の神樣はなんと粹なる筋書きを書くにや。塲内にフランク・シナトラの歌ふマイ・ウェイの流るゝ中ジーターはダイヤモンドを一周し觀客の喝采に應ふ。晡時郵便局に行き東京かわら版年間購讀料を支拂ふ。ことぶきの湯に徃き露天風呂に浴す。いなやに飰してかへる。NHKラヂオ第一放送に相撲中繼を聞く。新大關豪榮道橫綱白鵬を寄り切りにて破る。結びの一番新入幕の逸ノ城立合ひにて變化を見せ橫綱鶴龍を倒す。新入幕力士にして稀勢の里豪榮道の二大關を倒し、橫綱にも土をつけぬ。明日の對戰相手は一敗同士の白鵬なり。三重テレビ淺草お茶の間寄席に桂歌春が前座の頃の物語、山遊亭金太郎のちりとてちんを聽く。
昨來の雨は歇みしが空は依然として暗雲に覆はれ雲行き穩ならず。朝顏九輪花をつけたり。後期始業日なり。地下鐵道東山線名古屋驛の線路大雨のため冠水し、岩塚池下間にて不通となる。八時咖啡處コメダに朝飯を喫す。九時豐田學舍着。前期試驗の答案を返却し、會話文を暗唱せしめ、規則動詞の活用を復習す。二限の最中窓外俄に暗くなり忽ち大雨瀧の如し。須臾にして霽れ雲間に靑空覗きたり。一時二十分歸家。宮沢りえの母君死去。享年六十五。
雨もよひの空なり。早朝坡上を步す。川原を見下ろすに雜草を刈取りし跡に土鳩椋鳥の群いつもより多く、突如水面を掠めるやうに靑と橙色の小鳥矢の如く西より飛來りて東へ去りぬ。翡翠なり。二年半前に香流川の畔にて見かけし後は一度も姿を見ることなかりし故、これも亂世のためと思ひあきらめ居たりしに、圖らずも再びこれを見たる喜び譬へむに物なし。朝飯を食する中窓外暗雲立ちこめ見る／＼中に黯澹たり。十時半ごろ雨しづかに降り出しぬ。NHKラヂオ第一放送に大相撲中繼を聞く。新入幕の逸ノ城叩き込みにて大關稀勢の里を破る。
天氣好し。門巷寂寥としてたゞ蟲音の聞ゆるのみ。これを以て本日秋分なるを知る。朝顏今朝もまた五輪可憐なる花をつけたり。早朝堤上を步す。淸く澄みし川に大きなる魚三匹泳ぐを見る。輕鴨九羽。晡時ことぶきの湯に徃く。いなやに飰してかへる。この頃日沒は五時五十分ごろなり。入船亭扇橋の田能久、尻餠、加賀の千代、穴どろ、團子坂奇談を聽く。BS11藝賓館に桂春若の天狗裁きを聽く。
薄曇りの空午後に至りて快晴となる。早朝香流川の畔を步す。旬日雨なく水嵩減りぬ。輕鴨九羽。白鶺鴒數羽。ベランダの朝顏今朝は七輪花咲きたり。晡時接骨醫Ｔ氏を訪ふ。
靑空に鱗雲の棚引き風露の冷なること初冬の如し。早朝河岸を步す。輕鴨五羽、白鶺鴒三四羽。NHK總合演藝圖鑑に桂文枝のぼやき酒屋、Ｅテレ日本の話藝に桂ざこばの文七元結を聽く。ざこばに感心せず、口直しに立川談春の三方一兩損と替り目、古今亭圓菊の厩火事、瀧川鯉昇の武助馬を聽く。
曇天。寒冷昨日に劣らず。ベランダの朝顏今朝も小さなる花六輪つけたり。午前三時に錄畫せしBS-TBS落語硏究會に柳家小三治のやかんなめ、林家正藏の松山鏡を聽く。某所にて見つけし柳家權太樓の佐野山、靑菜、疝氣の蟲、二番煎じ、初天神、反對俥を聽く。
曇天。寒冷初冬の如し。早朝河濱を步すこと日課の如し。川向かうの田疇いつか稻刈終りぬ。ベランダの朝顏けふは五輪花をつくりたり。畏友Ｉ君後縱靭帶骨化症の手術を受く。午前驛前の床屋に赴き髮を理す。晡刻ことぶきの湯に徃き露天風呂に浴す。アミカに立寄り買物して後いなやに飰してかへる。この日蘇格蘭獨立の是非を問ふ國民黨あり、反對派過半數に達す。
曇りて寒し。早朝河頭を步す。西風强し。輕鴨三羽。ベランダの朝顏今朝も一輪小さなる花をつくりたり。門前の欅早くも黃葉す。晡時接骨醫Ｔ氏を訪ひ上半身を揉ましむ。首と肩の凝り和らぎたり。舞台通信のスタイルシートを改良す。
朝の中鱗雲のはざまに靑空覗きたりしが須臾にして空は厚き雲に蔽はれ暗き日となりぬ。早朝川緣を步す。輕鴨四羽、鵜一羽。某所にて見つけし立川志の輔の山崎屋、三軒長屋、紺屋高尾、百年目を聽く。
快晴。朝風寒し。朝顏每日一二輪花をつくりて母上と余の目を喜ばしむ。早朝川邊を步す。井原高忠歿。享年八十五。Ｓ氏の來書に接す。舊年身罷りしＴ氏の寫眞展への誘ひなり。正午過栃木南部、群馬南部、埼玉北部にて震度五弱の地震あり。晡刻ことぶきの湯に一浴す。不感溫度浴の心地よさ言はむ方なし。歸途いなやに飰す。BS11藝賓館に三遊亭天どんのともびき寄席、春風亭一之輔の新聞記事を聽く。一之輔の談に、新聞記事の稽古をつけしは當代林家正藏なりといふ。
曇天。朝顏また一輪花をつけたり。NHKラヂオ第一放送に大相撲九月塲所中繼を聽く。大關稀勢の里碧山に叩き込みにて敗れる。解說者舞の海秀平氏負傷力士が用ゐるサポーターに苦言を呈す。氏の解說いつもながら傾聽に値す。
空連日快晴なり。寒冷初冬の如し。朝顏今朝も二輪花ひらきたり。川端を步す。正午過辭書編纂の仕事を終へる。FM愛知サンデー・ソングブックにワーナー Masters of Pop Best Collection 1000 のドゥーワップ特輯を聽く。キャデラックスの Girl Friend 久しぶりに聽くを得たり。NHK總合演藝圖鑑に宮田陽・昇の漫才、古今亭志ん輔豐竹屋を聽く。BSフジ落語小僧にチャラチャラ亭マー坊ん廻し（小學六年生）、ふえふき亭がちょう風呂敷（中學三年生）、指南役柳家喜多八だくだくを聽く。Ｅテレ日本の話藝に林家正雀が年枝の怪談（林家彦六作）を聽く。
秋晴の空澄みて淸し。朝顏今朝も二輪花咲きたり。辭書Ｎ編纂餘事なし。疲勞甚し。パラオの神話に現るゝオルワンガルといふ傳說の島の綴りは Olwangal なるを知りぬ。
快晴。寒冷火鉢ほしきほどなり。今朝も朝顏一輪開きたり。七時川岸を步す。辭典Ｎ編纂。晡時混堂ことぶきの湯に赴き一浴す。いなやに飰してかへる。編纂二更に及ぶ。
曇天。風冷なり。朝顏今朝も二輪花をつけたり。早朝河畔を步す。鵜二羽ばた／＼と水面を蹴り飛立つを見る。衞生組合前ガードレールの雜草悉く刈りとられ、步きやすくなりたり。北海道昨夜より大雨尋常ならず、石狩日高膽振に大雨警報發令され、札幌江別惠庭北廣島千歲など九十萬人に避難勸告出されぬ。NHK總合テレビは臨時ニュースを延々放送す。豐平川の水濁流となりてうねり今にも氾濫せむとす。余は成年に達する前札幌江別惠庭に住せしことありしが、かくの如き大雨は記憶になし。慈君の思ひ出話を聞くに、慈君小學一年生の頃豐平川の畔に住し、大雨のため川の水氾濫寸前たりしことありといふ。金網にて蔽ひし大きなる石が動かさるゝほどの激流なりし由。終戰直後の話なり。この話より察するに、けふの大雨は六十數年ぶと知れるなり。正午前皮膚科に赴き口唇ヘルペスの治療藥を貰ふ。一時過突如雷雨。落雷の音物凄し。辭書Ｎの編纂作業を一刻も早く終らせむとて、編輯責任者たるＳ氏に編輯方針を何度尋ねても梨の礫にて返答なく、上役たる編輯員Ｍ氏もまた非常識なることこの上なく、作業は全く進展せぬまゝ日は空しく暮れたり。數日來夥しき電子郵件を交はすも議論は進捗せず、たゞ徒勞感のみ募るばかりなり。常識をわきまへぬ者ほど迷惑なる者なし。五時過ふたゝび雷雨。東京埼玉千葉茨城に大雨洪水警報發令せらる。
晴後に陰。朝飯の前に坡上を步すこと日課の如し。家にかへりて食事しながらベランダの鉢植を眺むるに、去月植ゑたる朝顏の蔓に大輪の花二つ開きたり。いと鮮やかなる薄き靑色を呈す。本年は花をつけざるべしと諦めゐたりしかば余の喜び限りなし。母上も大喜びにて携帶電話のカメラを用ひて花を撮影せらる。辭書Ｎ編纂餘事なし。一時過咖啡を淹れ一服し朝顏を見るに、花は早くもすぼみて色は紫色に變りぬ。仕事に一區切りつけて完成分を編輯員Ｓ氏に交附す。夜に入りて風吹き出で電光閃き雲のゆきゝ穩ならず。
秋晴愛すべし。早朝堤上を步す。寒冷暮秋の如し。辭書Ｎ編纂。晡時主治醫を訪ひ藥を請ふ。ことぶきの湯に一浴す。いなやに飰してかへる。夏椿の梢なる雀蜂の巢撤去せられしが、巨大なる雀蜂二三匹飛囘りて頗危險なり。初更ふたゝび辭書編纂。BS11藝賓館に柳家權太樓が猫の災難を聽く。
空どんよりと曇りて暗し。午前戲曲Ｂ校正。午後戲曲Ｃ校正。晡時接骨醫Ｔ氏を訪ふ。今宵は中秋の名月なれど雲に遮られて朧月なり。
夜來の雨は霽れて半陰半晴なり。早朝川緣を步す。午前辭書Ｎの追加校正を行ふ。けだし編輯員Ｓ氏の需に應じるがためなり。午後戲曲Ａの校正をなす。夕刻作業を終りて直に監修者に送る。Ｅテレ日本の話藝に三遊亭小遊三が粗忽の釘を聽く。
空始て晴る。俄に暑し。午前川岸を步す。落語を聽く。古今亭圓菊の唐茄子屋政談、黃金餠、幾代餠、反魂香。柳亭市馬の禁酒番屋、片棒、目黑のさんま。桃月菴白酒の明烏、橘家圓太郎の締め込み、三遊亭小遊三が悋氣の火の玉。暮方細雨降り初め雷鳴響く。忽ち大雨沛然たり。
小雨ふりてはまた歇む。早朝編輯員Ｓ氏に辭書Ｎの校正文件を送る。午前母上と倶にあぐりん村に赴き地元產の梨野菜腸詰などを買ふ。歸途超級市塲Ｈに立寄り段ボール箱を入手す。家にかへりて梱包し、ヤマト運輸に赴きＳ子に發送す。階前の夏椿の梢に大きなる雀蜂の巢あり。撤去するまで近寄るべからずと書きたる貼紙あり。晡時ことぶきの湯に一浴す。いなやに飰してかへる。三重テレビ淺草お茶の間寄席に隅田川馬石の安兵衞狐、五街道雲助が堀の内を聽く。
けふも雨もよひの空なり。曉明川緣を步す。十時半頃より霧雨ふる。終日辭書校正。終れば初更なり。雨夜に入るも歇まず。
曇天。昧爽川端を步す。伸び放題に伸びし綠陰步道の草悉く刈りとられたり。土鳩、白鶺鴒。辭書Ｎの校正初更に及ぶ。疲勞困憊す。枕頭日曜午後十一時BSプレミアムにて錄畫し置きたるモンティ・パイソン再結成公演第二部を看る。ジョン・クリーズ、テリー・ジョーンズ、マイケル・ペイリン、エリック・アイドル、テリー・ギリアムの五人往年の傑作コントを舞臺に再現す。幕切は豫想通り "Always look on the bright side of life" の大合唱なり。
夜來の雨明け方に霽る。曇天。早朝河岸を步すこと日課の如し。編輯員Ｓ氏の需により建築家某氏の取材音源を雜誌の記事に仕組む。同じくＳ氏の需に應じて辭書Ｎの校正を請負ふ。晡時休憩がてらいつもの溫泉に行き一浴す。いなやに飰してかへる。辭書校正初更に至る。BS11藝賓館に柳家さん喬の幾代餠を聽く。
陰曆八月八日。今日もまた雨もよひの空なり。六時過河岸を步す。風甚だ冷なり。鵜一羽、輕鴨六七羽。家にかへるや雨降來る。午前齒科醫Ａ氏を訪ひ定期檢診を受く。晡時接骨醫Ｔ氏を訪ふ。雨次第にふりまされり。