天氣和暖昨日の如し。世は今日までこの和暖といふ語をワダンと讀み慣はしゐたりしが、廣辭苑にも大辭林にもこの語は見えず、日本國語大辭典を閱するに、クヮダンと讀むが正しきを知りぬ。O市圖書館及び中央圖書館に徃く。泉鏡花の婦系圖を讀む。
東へ、西へ、と置塲處の間數を示した標杙が仄白く立つて、車は一臺も無かつた。眞黑な溝の緣に、野を焚いた跡の濕つたかと見える破風呂敷を開いて、式の如き小燈が、夏になつてもこればかりは蟲も寄るまい、明の果敢さ。三束五束附木を竝べたのを前に置いて、手を支いて、縺れ髮の頸淸らかに、襟脚白く、女房がお辭儀をした、仰向けになつて、蹈反つて、泣寐入りに寐入つたらしい嬰兒が懷に、膝に縋つて六歲ばかりの男の子が、指を銜へながら往來をきよろ/\と視める背後に、母親のその背に凭れかゝつて、四歲ぐらいなのがもう一人。
一陣風が吹くと、姿も店も吹き消されそうで哀な光景。浮世の影繪が鬼の手の機關で、月なき辻へ映るのである。
さりながら、緣日の神佛は、賽錢の降る中ならず、恁る處にこそ、影向して、露にな濡れそ、夜風に堪へよ、と母子の上に袖笠して、遠音に觀世ものゝ囃子の聲を打聞かせ給ふらんよ。
惡夢をみる。睡より寤むれば全身汗みどろにて、枕頭の時計を見るに正午過なり。生きた心地せず。晴天。鷗外先生の阿部一族、山椒大夫、高瀨舟を再讀す。執筆餘事なし。終日門を出でず。夕刻風の音騷然たり。
生あるものは必ず滅する。老木の朽ち枯れるそばで、若木は茂り榮えて行く。(阿部一族)
安壽戀しや、ほうやれほ。廚子王戀しや、ほうやれほ。(山椒大夫)
苦から救つてやらうと思つて命を絕つた。それが罪であらうか。(高瀨舟)
蚤起。快晴。微風嫋〻たること春日の如し。鷗外先生の雁を讀む。午後いつもの溫泉に徃く。薄暮雁讀了。編輯員に草稾を交附す。夜八時BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館に喬太郎が初天神、金原亭馬遊が猫の皿を聽く。
容貌はその持主を何人にも推薦する。
一匹の人間が持つてゐるだけの精力を一時に傾注すると、實際不可能な事はなくなるかも知れない。
常に自分より大きい、强い物の迫害を避けなくてはゐられぬ蟲は、mimicry を持つている。女は噓を衝く。
美しいものが人の心を和げる威力の下には、親だつて、老人だつて屈せずにはゐられない。
女はどんな正直な女でも、その時心に持つてゐる事を隱して、外の事を言ふのを、男程苦にしはしない。
人を騙すよりは、人に騙されてゐる方が、氣が安い。
氣が利かぬやうでも、女は女に遭遇して觀察をせずには置かない。
女と云ふものは時々ぶんなぐつてくれる男にでなくつては惚れません。
世間の奴等に附き合つて見るに、目上に腰の低い奴は、目下にはつらく當つて、弱いものいじめをする。
一體女は何事によらず決心するまでには氣の毒な程迷つて、とつおいつする癖に、旣に決心したとなると、男のやうに左顧右眄しないで、œillères を裝はれた馬のやうに、向うばかり見て猛進するものである。
寢卷にも着替へず睡りたり。天氣好晴。無風。當世書生氣質を讀終へる。注文の稿を草して編輯員に交附す。後期試驗の答案を採點す。
社會は決して我友ぢやアない。ほとんど讐敵ともいふべき程、我には薄情なもんだからして、たとへ少々な事といへども、我身に弱點を有して居るのは、蓋し氣のひける基本になるから、處世の大障碍といはざるを得ずだ。
人生槪して五十年。其五十年の其間にやア、失策もあるし成功もあるし、恥もかく、名譽も得る。七轉八起、一榮一辱、棺に白布を蓋ふにいたつて、初て其名譽が定るんだ。
兩三日來の强風漸く歇み天氣好晴、寒氣ゆるやかになりぬ。NHK總合桂米丸の演藝圖鑑に桂竹丸の西鄉隆盛傳、めおと樂團ジキジキといふ夫婦の音曲漫才を聽く。この日慈君七十一歲の誕辰なり。久振りにて廚房に立ちハヤシライスとアボガドのサラドをつくりて祝ふ。橫綱日馬富士白鵬に相撲をとらせず全勝優勝を果す。高見盛引退表明。滿月皎〻たり。當世書生氣質をよむこと昨の如し。
俗人は笑ふ人を見れば、あの方はお嬉しい事があると見えるといへど、こは大なる間違ひなり。笑は喜びより出るにはあらで、多くは自慢からでるもの故、笑ふ人をば誇るといふこそ、寧ろ當然の事ならめ。
人若き時は架空の癖あり。たゞ一向に奇を求めて、身を忘るゝに至れる事、まことにおろかなる振舞なり。
經驗は智識の母、蹉跌は覺悟の門。
しかしフレンド〔朋友〕となツた以上は、互に想ふ事を明しやツて、長短相助けて奬誡するが、眞の情誼だらう。
朝の中晴れしが直に曇る。けふも西風吹き狂ひて寒氣激甚なり。晡時小雪ちら/\と降出し次第に吹雪となり、見る/\中に積り行くなり。夜陰雲散じて幾望の月明かなり。福砂屋のオランダケーキを食す。竟日逍遙先生の當世書生氣質をよむ。
さま/″\に、移れば換る浮世かな。
書生のうちに遊ぶやつは、膽の少さいおとなしい方で、書生のうちに忍耐の强いやつが、却つておとなしくないやつヨ。
兎角世の中には、磊落を粗暴と取違へたり、不羈を放縱と間違へたり、はねつかへりを活潑だと思つたり、ずるいのを大膽だと思ふやうな、了見ちがひが、あるには困るよ。
兎角世の中は、學問ばかりでは渡られない、世才といふものが肝腎だ。
親父や信友の間に、手練手管が行はれるやうぢやア、世も末なりといはざるを得ずぢやアないか。
官員は娼妓と一般、一トたび官員となるたる時には、足をぬくこといと/\難し。
今まで持ツて居たプレジュア〔快樂〕を奪はれた上に、ホウプ〔將來〕まで無くなつてしまツちやア、人間はとても、立行くもんぢやアない。
乍陰乍晴。西風吹き荒れて寒氣甚し。讀書刻の移るを忘る。二時半ことぶきの湯に徃く。時恰も生藥風呂に漢方抽出液を投入せしばかりにて湯の色濃く肌に心地よし。アミカに買物をなし中央圖書館に立寄りてかへる。黃昏突風あり庭樹騷然たり。草稾をつくりて編輯員に交附すること連日のごとし。寒月氷のごとし。田舍敎師讀了。心に殘りし文句を茲に記し置く。
世間は自分の前におもしろい樂しい舞臺をひろげてゐると思ふこともあれば、汚ない醜い近づくべからざる現象を示してゐると思ふこともある。
人間は理想が無くつては駄目です。
成功不成功は人格の上に何の價値もない。
世の中は好いが好いぢやない、惡いが惡いぢやない、幸福が幸福ぢやない、何んな人でも矢張人間は人間で、それ相應の安慰と幸福とはある。
兎に角不幸福と言つても死んでかうして新聞に書れゝば光榮である。
名譽を逐つて、都會の塵に塗れたつて、仕方がありませんな……何んなに得意になつたつて、死が一度來れば、人々から一滴の淚をそゝがれるばかりぢやありませんか。死んでからいくら淚をそゝがれたつて仕方がない!
今にして初めて平凡の偉大なるを知る。
今更に感ぜられるのは、境遇につれて變はり行く人々の感情であつた。
好んで詩人となる勿れ、好んで俗物となる勿れ。
どんな生活でも新しい生活には意味があり希望があるやうに思はれる。
若い心にはどのやうなことでもおもしろい種になる。
若い人々は話がないといつても話がある。
半陰半晴。朝の中寒氣甚しく車の硝子窓悉く凍りたり。コメダに朝飯を喫す。今朝も客少く、店内片隅の卓子に靜坐して小倉トーストに茹で玉子を食し、咖啡を啜り、烟草を吸ひながら持參したる文庫本を繙き寬ぐには好適なり。前庭のテラスに小狗一匹椅子に繫がれてあり。テリアといふ種類なるにや、余は犬種に疎ければ固より知るべからざれど、木曜の朝たび/\見かけるなり。飼主が食事を終へるまで此處にて待つなるべし。余が通りかゝるにいつも濡れたるが如き眼を余に向け何やら哀願する面持を示す。同情に堪へざるなり。後期試驗の日なり。一限二限とも恙なく畢りぬ。午後一時家にかへる。坪内逍遙先生の小說神髓を再讀す。
原稿をつくり編輯員に交附す。田山花袋田舍敎師のつゞきを讀む。讀書三更に及ぶ。小說は美術なり、實用に供ふべきものにあらねば、其實益をあげつらはむことなか/\に曲ごとなるべし。
晏起連日の如し。朝蚤く目は寤むれど倦怠感甚しく體に鉛の詰りたるが如き心地して、十一時近くまで床を出づること能はざるなり。日の高きあひだは氣分塞ぎて樂しまず、日の沒して後始て精神安らぐなり。これ將に鬱の症候なり。雨は霽れしが空は依然として雲に覆はれたり。書齋の窗を開けるに風寒からず。午下堤上を步す。いつもの溫泉に徃く。主治醫を訪ひ診察を乞ふ。今週より藥の量を減らす豫定なりしかど心細き限りにて暫は今のまゝ樣子をみることゝなす。理髮舖に立寄りてかへる。筆秉りしが感興來らずして已む。夜八時BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館に喬太郎文雀二人會を聽く。今宵の企畫は珍しき噺なりとて桂文雀は寫眞の仇討、喬太郎は佛馬を語れり。文雀は駒澤大學の落語硏究會出身にて學生時代に上方噺の月宮殿星の都を東京言葉に直して語りし事ありといふ。
曇天。無風。朝の中折〻薄日さし來りしが午後に及びて雨もよひの空となる。午下インターバル速步。桌上型電腦 ThinkCentre M58 の記憶體二ギガバイトを四ギガバイトに增設す。トランセンド社製の記憶體一枚値千三百八十圓。廉價驚くばかりなり。續續金色夜叉、新續金色夜叉を讀む。夜に入りて雨來る。
ある女世に比無き錦を所持いたし候處、夏の熱き盛とて、差當り用無く思ひ候不覺より、人の望むまゝに貸與へ候後は、いかに申せども返さず、其内に秋過ぎ、冬來り候て、一枚の曠着さへ無き身貧に相成候ほどに、いよいよ先の錦の事を思ひに思ひ候へども、今は何處の人手に渡り候とも知れず、日頃それのみ苦に病み、慨き暮し居り候折から、さる方にて計らず一人の美き女に逢ひ候處、彼の錦をば華かに着飾り、先の持主とも知らず貧き女の前にて散々ひけらかし候上に、恥まで與へ候を、彼女は其身の過と諦め候て、泣く泣く無念を忍び申候事に御座候が、其錦に深き思の繫り候ほど、これ見よがしに着たる女こそ、憎くも、悔くも、恨くも、謂はうやう無き心の内と察せられ申候。
大寒。靑空薄き靄の如き雲に蔽はる。北風强し。終日門を出でず。拂曉錄畫せしNHK總合テレビ桂米丸の演藝圖鑒に柳家小滿んの松山鏡を聽く。金色夜叉讀了。明治時代に高利貸をアイスと稱したるは氷菓子のもじりなるを知る。
君に勸む、金縷の衣を惜む莫れ。君に勸む、須く少年の時を惜むべし。花あり折るに堪へなば直に折るべし。花なきを待つて空く枝を折ること莫れ。
儚いのが世の中と覺悟した上で、その儚い、滿らない中で切ては樂を求めやうとして、つまり我々が働いてゐるのだ。
可いか、宮さん、一月の十七日だ。來年の今月今夜になつたらば、僕の淚で必ず月は曇らして見せるから、月が……月が……月が……曇つたらば、宮さん、貫一は何處かでお前を恨んで、今夜のやうに泣いてゐると思つてくれ。
人間の幸福ばかりは決して財で買えるものぢやないよ。幸福と財とは全く別物だよ。
世間には、馬車に乘つて心配さうな靑い顏をして、夜會へ招ばれて行く人もあれば、自分の妻子を車に載せて、それを自分が挽いて花見に出掛ける車夫もある。
愛情の無い結婚は究竟自他の後悔だよ。
乍陰乍晴。竟日岩波文庫の金色夜叉を讀む。元橫綱大鵬納谷幸喜歿。行年七十二。
今日もまたく晴れしが朔風吹きすさみて寒氣骨に徹す。執筆。書齋の冷氣堪難ければダウンジャケットを羽織りて草稿をつくる。髙𣘺孫左衛門の翁飴を食す。午後溫泉。何故にやいつもより客多し。ガソリン價格急騰一リットル百五十二圓となる。夜八時テレビ愛知淺草お茶の間寄席をみる。ナイツの漫才いつ聽きても佳し。林家花の紙切り。女性の紙切りは寄席三百年の歷史で初めてゞございますが前口上なり。九時半Eテレ日本の話藝に桂春若の三十石を聽く。櫓を漕ぐ塲面に五代目桂文枝と立川談志の仕草の違ひを解說してその折衷案を披露し、談志が好きですと告白せり。
天氣牢晴。風寒し。茶房コメダに朝飯を喫す。今年度最終授業を行ふ。先週につゞきて期末試驗前の復習に終始せり。先週配布したるプリントを持參せざる者多く、敎科書さへ持ち來らぬ者も少からず。心勞甚し。午後讀書他事なし。
快晴の空一點の雲もなし。寒氣やゝ寬なり。戲曲Cの添刪をすれば日は忽午なり。午後執筆。草稿を編輯員に交附す。夕刻川岸を步む。泉鏡花の高野聖を讀む。
輕陰。北風烈しく寒氣凛冽なり。咖啡所コメダに朝飯を喫す。三好の活動小屋に徃きサム・メンデス監督の映畫スカイフォールを看る。メンデスが監督ならば駄作にはならざるべしとの豫感は的中せり。脚本よし、演出よし。撮影監督ロジャー・ディーキンスの照明見事。二時間半の長尺なれど人をして飽きさせず。主役はダニエル・クレイグにあらずハビエル・バルデムにあらず、ジュディ・デンチなり。近年の007シリーズにありては出色の出來なり。豫告篇五本。アーノルド・シュワルツェネッガー復歸第一作ラストスタンド、ブルース・ウィリス主演ダイ・ハード/ラスト・デイ、ニコラス・ケイジ主演ゴーストライダー2、トム・クルーズ主演アウトロー(英題 Jack Reacher)、クエンティン・タランティーノ監督ジャンゴ繫がれざる者。午後執筆。夜初更溫泉。歸途西の中空に纎月朦朧たり。二更BS11柳家喬太郎のようこそ藝賓館に瀧川鯉昇一門會を聽く。春風亭傳枝寄合酒、瀧川鯉朝あいつのゐない朝の二席なり。鯉朝には弟子志願者あり、弟子として認めらるゝならば師瀧川鯉昇にとりては初の孫弟子、故春風亭柳昇にとりては曾孫弟子となる由。大島渚歿。享年八十。
風雨と共に寒氣また甚しく書窓黯澹たり。午後に至りて雨霽れしが風なほ强し。昨日故障せし Windows Update の復舊を試む。Windows フォルダー内の WindowsUpdate.log を見るに 0xC8000222 といふエラーコード見ゆ。この數値を檢索するに、バッチファイルによる解決策を指南するマイクロソフト社の頁を見つけたり。僅十行のプログラムを書きて實行せし後再起動せしむるに、見事 Windows Update 正しく動作せり。更新プログラム百三十五個を適用し、つゞけて Windows 7 Service Pack 1 を導入す。作業を終れば日は將に暮れむとす。關東甲信大雪の由。夜晴れて星出づ。
薄く晴れてあたゝかなり。瀧野川M氏より一年半振りに電子郵件あり。依然として入院中の身にてこの連休は一時歸宅の由。ThinkCentre M58 のハードディスク殘量を見るに容量160GBの中殘り僅40GBなり。連休なるを幸にディスクを交換することゝなす。二時FM愛知サンデー・ソングブックを聽きて後、アプライドに徃き Seagate 製1TBハードディスクを購ふ。價格五九七〇圓。三年前500GBのディスクを買ひし時と同じ値段なればこの三年にて半値となりしを知る。廉價驚くの外なし。Lenovo ThinkVantage Tools を用ひてリカバリーディスク十一枚を作成す。古き Western Digital 製ハードディスクを取外し新しきハードディスクを接續す。リカバリーディスクを讀み込ませること一時間ばかりにして無事 Windows 7 Home の畫面表示され、工塲出荷狀態に復元せり。comfortable PC を使ひて環境を整へて後、ウインドウズを更新せむとするに、何故にや Windows Update 機能せず。赤き×印表示され、幾度クリックしても現在サービスが実行されていないため、Windows Update で更新プログラムを確認できません。このコンピューターの再起動が必要な可能性がありますのダイアログが表示せらるゝばかり。互聯網を閱して解決策を探せど埒明かず。已むを得ず再び同じ手順をたどりて工塲出荷狀態に戾す。夜は忽三更となりぬ。疲勞甚しければ續きの作業は明日行ふことゝす。
舊十二月朔。半陰半晴。溫暖小春の天氣を思はしむ。後期試驗問題を作成す。泉鏡花の高野聖を讀む。咖啡を啜り龜屋芳廣のショコラロールを食す。三時堤上を步す。微風嫋々春の近きを知らしむ。五年前より使ひ來りし桌上型電腦 ThinkCentre M57 の換氣扇とハードディスクの騷音少しく耳障りなるを以て、今迄豫備として保管し置きたる M58 を本日より主に使ふことゝし、M57 は豫備となす。環境の同期二時間ばかりにて完了す。
天氣連日限りなく佳し。母を伴ひヤマト運輸に徃きS子に荷物一凾を送る。あぐりん村に三ヶ日產小粒蜜柑を買ひ、龜屋芳廣に立寄りてショコラロールと有松絞を購ひて歸れば日は午なり。晝餉に鏡開きの汁粉を食す。編輯員に原稿を交附す。田山花袋の蒲團を讀む。三時河岸を步す。夕餉の後アルペンに徃きアクリル製の薄き帽子を買ひて後、いつもの溫泉に赴きシルク風呂に不感溫度浴をなす。アミカに立寄りて買物してかへる。十代目金原亭馬生のざる屋、王子の狐を聽く。
天氣連日佳し。西北の風冷なり。襟卷をまとふ。コメダに徃き小倉トースト茹で玉子を食し咖啡を啜る。舊臘以來店内混雜せず居心地よし。九時過豐田學舍着。今年初囘の授業なり。一限二限とも語根母音變化動詞と不規則動詞の活用を復習す。試驗前のことゝて學生諸氏みな大眞面目、私語に興ずる者なく敎塲寂として聲なし。歸途市役所に立寄り用亊を辨ず。二時前家にかへる。咖啡を喫して後ホームセンターに赴きセキセイ鸚哥の混合餌を購ふ。歸路アピタに立寄り一階の時計店にて懷中時計の電池を交換せしむ。一階片隅に警察官十數人整列しゐるを見て、何事にやと樣子を見るに、一月十日は一一〇番の日と毛筆にて大書したる白き橫斷幕を揭げ、向ひには安全パトロールと書きたるゼッケンを背に張りし老人二十名ばかり警官に對面して立ち居たり。警固祭が棒の手の衣裳を着たる者も數名あり。防犯訓練のやうなり。晡時歸家。夕餉に自家製山桃酒を飮む。燈下執筆。二更風死したるをみて川端をインターバル速步にてあゆむ。星斗森然たり。
天氣牢晴。西北の風强きこと連日のごとし。讀書執筆餘事なし。夕刻川緣を步す。ラジオデイズにて無料公開されし大瀧詠一的2012第二囘及び第三囘を聽く。去年放送のアメリカン・ポップス傳 Part 2 餘話興味津々たり。
晏起。快晴。何故にや輕き頭痛を覺ゆ。昨日の草稿を全文書き改め編輯員に交附す。午下河畔を步す。西風やゝ强きに日の光照り渡りて發汗忽襯衣を霑す。二時いつもの溫泉に徃く。不感溫度浴まことに心地よし。年末年始に體重の一グラムも增減せざりしは快擧といふべし。三時主治醫を問ひ藥を乞ふ。精神やうやく安定したるを以て次囘以降藥の量を減らすことゝなす。家にかへれば日は晡なり。二更BSジャパンに北野武の活動寫眞アウトレイジを看る。幾度看ても編輯の妙に感歎する外なし。
晏起日は忽にして午なり。快晴。西北の風やゝ强し。讀書執筆他事なし。夕刻川岸を步す。夕餉に馬面剝の煮付、大根の葉と水菜の二草粥を食す。差出人不明の年賀狀一通屆きたり。表も裏も印刷文のみにて手書の文字あらざれば筆跡を賴りに推測すること能はず。粗忽者には粗忽者の友あるなり。
薄く曇りて風冷なり。草稿に茟をとらむとせしが感興來らず。一枚をも書き得ずして已む。夕刻インターバル速步を再開す。舊臘三日以來なり。今朝五時十五分總合テレビにて錄畫せし桂米丸の演藝圖鑑に春風亭小柳枝の桃太郞を聽く。去三日午前二時BSプレミアムにて錄畫し置きたるチャップリンの獨裁者を看る。余がこの活動寫眞を看たりしは三十年以上昔のことなるべし。かくも長尺なりしとは思はざりき。久しぶりに鑑賞してさしたる感動をも催さゞるは如何なる故にや。余は專らチャップリンの道化芝居を樂しみたり。路上にてナチスの突擊隊員と格鬪する中女の振下ろすフライパンにて頭を毆られ、步道と車道を下りつ上りつしながらフラ/\と步む動き、また理髮店にてブラームスがハンガリー舞曲第五番に合せて客の髭を剃り整髮する動作、或は獨裁者ヒンケルが風船の地球儀をふはり/\と操る動きなどなり。この映畫はヒトラーがチャップリンの大衆的人氣に嫉妬して口髭をたくはへ、之を知りたるチャップリンがヒトラーに報復せむとて製作したる作品なり。
輕陰。無風。昨日に比すれば寒氣やゝ寬なり。拂曉錄畫せしワールドプロレスリングに昨日東京ドームにて催されし新日本プロレス WRESTLE KINGDOM 7 EVOLUTION のあらましを見る。暴走キングコングこと真壁刀義對柴田勝頼は真壁が短距離のラリアットを驅使して最後はキングコングニードロップを決め貫祿を示したり。IWGP王者棚橋弘至對オカダ・カズチカは棚橋勝ちて興醒めなることこの上なし。新日本の職業摔跤選手の中余が崇敬する人物は真壁なり。この人はいかなる相手に對しても眞つ向勝負を挑み、相手の技を避けず全身にこれを受けるなり。真壁の試合は勝敗に係らず常に見應へあり。棚橋とは正反對なり。夜初更ことぶきの湯に徃く。生藥風呂に入りて後シルク風呂に不感溫度浴をなす。圖書館に立寄り本を返卻して家にかへり、曉明錄畫せしBS-TBS落語硏究會に入船亭扇遊の芝濱を聽く。
天氣牢晴。寒氣日に從つていよ/\甚し。嘉田由紀子滋賀縣知事日本未來の黨代表辭任表明。ジェラール・ドパルデュー佛國の富裕層增稅に抗議し魯西亞國籍を取得す。晝食に黃粉餠を食す。食後咖啡を啜り柳橋逸品會が宴の華を食す。初更N子を地下鐵道驛に送りて別る。二更Eテレ日本の話藝に桂歌丸の紺屋高尾を聽く。五代目桂文枝のたちきれ線香を聽く。人物造形の深みまことに佳し。つゞけて悋氣の獨樂、輕業講釋を聽く。
隂。嚴寒。粉雪ちら/\と降出すや突如强風吹起こりて忽折〻吹雪となる。暫くにして風雪やむ。終日門を出でず。朝食にお節と汁粉を食し、自家製山桃酒を炭酸水にて割りて飮む。午後十二時十五分總合テレビにて錄畫し置きたる初笑ひ東西寄席をみる。一組目は若手藝人と思ひたりしに意外にも鈴本演藝塲の内海桂子あした順子高座に上がるを見て一驚を喫す。踊り延々つゞきて尺が伸び、周章狼狽したるスタッフ二番手のナイツを無理やり舞臺に登塲せしめたり。關西藝人の中余が感心したるは酒井くにお・とおるのみなり。トリの爆笑問題拔群。大トリは十一代桂文治の平林なり。太田光は舊臘聲帶ポリープの手術を受け、田中裕二も同日同じ執刀醫による扁桃除去手術を受けしばかりにて、太田の聲少しくしはがれて聞えしが幸にして耳障りにはあらず。故立川談志の病の事思返されて余はたゞ太田の健康を祈るばかりなり。夜桂米朝のたちぎれ線香足上りなど聽きつゝ共同通信の記事を讀むに米朝の記事あり。數へ年八十八の米朝昨日大阪にて催されし一門會に出演し、弟子のざこば感淚にむせびて口上滯り、米朝も、私も何か泣きとうなりましたと應じたる由。余もまた暗淚を催しぬ。
空に霞の如き雲かゝりて日光眩しからず。連日無風。一ノ藏ひめぜんといふ日本酒を飮む。余が如き下戶には飮みやすき酒なり。午下腹ごなしにN子を誘ひ鴨田川の堤上を步す。水少なき川底に白鶺鴒夥し。遊步道の植込に雀に交じりて一羽の鶫あり。鴨田公園に親子紙鳶を飛ばさんとするに風なきを以てあがらず。景行天皇社に賽せんとせしが社殿に至る階段の下まで人々行列をなすを見て初詣は他日に讓り、咖啡所コメダに一茶す。夕刻ことぶきの湯に徃く。子供連の親多く混雜甚し。夕餉にチーズ、スモークサーモン、月見薯蕷蕎麦を食す。自家製山桃のリキュールを飮む。風味佳し。食後ふたゝびN子と町内を散策す。香流川に沿ひて新藤森橋に抵る。昨夜に比してジョギングの人多し。舊街道の馬頭觀音に賽す。母上夜なべしてN子に手袋を編まれる。勤め先の事務所は室溫低く電腦を操作する指先冷えて作業に支障あるを以てなり。
舊十一月廿日。快晴。風絕ゆ。四鄰寂として聲なくいかにも長閑なり。父上母上N子と屠蘇を酌交し正月料理に舌鼓を打つ。煮染め、鮭のベーコン卷、錦玉子、伊達卷、黑豆、膾、蓮根、鮹、燒豚、數の子、昆布卷、慈姑、田作、羊羹すべて自家製なり。今朝八時BS-TBSにて錄畫し置きたる落語硏究會番外編に柳家小三治一門會を聽く。柳家三三の高砂や寔に佳し。腕前めき/\上達するなり。小三治死神また佳し。夕餉の後腹ごなしにN子と俱に出でゝ堤上を步す。出步く者なく車の往來も稀にて、對岸に男一人ジョギングするを見かけるばかり。町内寂々として音なく夜は沈々として更けゆくなり。